東京大学の赤門(撮影:川嶋諭)

 新型コロナウイルス・パンデミックで、「入学式」を迎えられない新入生向け「祝辞」という形を取って、難局に向き合う若い世代へのアドバイスを記しています。

 もちろん若い世代に限った内容ではなく、子供から高齢の皆さんまで、日本人全員に知っていただきたいのが、日本の教育が直面している危機的状況です。

 その打開策と併せて、ポイントを押さえて詳述し、その場しのぎのごまかしでなく、真に有効なアクションプラン、未来を担う人の行動指針として整理したいと思います。

グローバル標準が向こうからやって来た

 危機の時代の中にあって、学生生活を送る皆さんに、青春の数年の過ごし方として第一にお勧めするのは、バイトとサークル活動が停止して、ある意味「グローバル標準」の状態に結果的に近づいた2020年からの数年を

1 学生の本分である学業を通じた、自身のパワーアップに活用すること

 です。具体的には「弱点の克服」と「得意技を増やすこと」の2つが有効です。

「弱点の克服」は「教養力の強化」と言い換えることができます。

 以前苦手だった科目があれば、もう受験は関係ありませんから、その本来の楽しみ方を知って、自分の強みを増すツールにする、またとないチャンスです。

 文科系で「数学が嫌い」という学生が多いですが、それは皆さんが悪いわけではない。

 苦手な科目が嫌いであるという場合、その学術の魅力を伝え、力を伸ばすことができなかったそれまでの教育が100%悪いのです。

 仮に、教育の勝利が学生の知的好奇心や主体的な努力であるとするなら、あなたが「苦手」「嫌い」と思う科目は、あなたの受けてきた「教育」の惨敗であり、学習空疎化の証拠に過ぎません。

 大学には、もう嫌な学習環境は存在しません。