昨年4月、ロシアのウラジオストクを訪れた時の金正恩委員長(写真:ロイター/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 金正恩国務委員長の動静は今なお謎に包まれている。断片的な周辺情報がいくつか報じられているが、疑問はますます深まっている。

米国は何か新しい情報をつかんだのか

 これまで、米国は北朝鮮の動向について、「異常事態を推定させる動きはない」との立場であった。米国防総省の高官は、「米国は北朝鮮指導部の状況や金委員長の健康に関して結論的な評価を下せるいかなる追加情報を得られてはおらず、そのような兆しが見えない」と述べ、「西太平洋とアジア地域の米軍も標準水準の準備態勢を維持している」と説明していた。

 しかし、28日朝(日本時間)トランプ大統領は、ホワイトハウスのローズガーデンで行われた記者懇談会で「金正恩氏の容態については承知しているが、今は何も言えない」と述べ、さらに記者の質問に対し、「近い将来、金委員長の状態について、おそらく聞くことになるだろう」と答えたとの報道があった。「金委員長が元気であることを願う」とも述べたようである。トランプ大統領が何を根拠にこのような発言をしているか明らかではなく、詳細は不明である。しかし、最近の一連の動きからこれは決して無視できない発言のように思われる。

なぜ中国は医療関係者を派遣したのか

 TBSによれば、中国の最高レベルの医療機関「人民解放軍総医院」の発熱外来担当者がJNNの取材に対し、医療専門家を含む代表団を派遣したことを認めたという。これまでの報道をまとめると、この代表団は宋濤・中央対外連絡部長が率い、50人の医師団からなり、医療器材も携行しているとのことである。

 これまでは、金正恩氏の心臓病が悪化し、心臓ステント手術を行った等の報道もあった。しかし、その対応のために中国が医療専門家を派遣したとすると疑問が2点浮かんでくる。