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ケニア・ナイロビの壁に描かれたコロナ撲滅のグラフィティ(2020年4月19日月、写真:AP/アフロ)

(文:白戸圭一)

 国際連合アフリカ経済委員会(UNECA)が4月17日に公表した新型コロナウイルス感染に関する報告書によると、アフリカで何も対策が講じられなかった場合、人口約13億人のうち2020年中に12億人以上が感染し、330万人が死亡するという。アフリカ各国が厳しい感染抑制策を実施した場合でも、1億2280万人が感染し、30万人が死亡すると予測している。

 こうした厳しい状況の中、中国はアフリカ諸国に対し、医療器材や人材などを次々と支援する「マスク外交」を展開している。中国の国営メディアは、自国政府の貢献を国内外に宣伝する記事で溢れている。

黒人だけ入店を拒否

 そんな中、4月18日にケニアの首都ナイロビに住む友人(ケニア人)から筆者のスマートフォンに37秒間の短い動画が送られてきた。

 早速視聴してみると、そこにはアパルトヘイト(人種隔離)政策が存在した1980年代の南アフリカ共和国か、公民権運動以前の1950年代の米国南部ではないかと錯覚するような光景が写っていた。

 スーツ姿の身なりの良い黒人女性がショッピングモールに入ろうとしたところ、左腕に赤い腕章を着けた黒いスーツ姿の中国人男性2人が入店を拒む。黒人女性の友人と思しき白人女性が英語で「なぜ?」と男性2人に食い下がると、男性たちは「あなたは入っていいですよ」と手で合図して白人女性だけを入店させようとするが、黒人女性に対しては「あなたは駄目です」と頑なに入店を拒む。

 動画には、

「この動画はSNSで広く共有されている。ケニア人、そして全てのアフリカ人に対するこの酷い差別に対し、激しい批判と議論の輪が広がっている」

 という友人のコメントが添えてあった。

 友人によると、この動画は最近、中国南部広東省の広州市で撮影されたものだという。

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