3月20日、インドネシアのスラバヤにあるモスクでの金曜礼拝の様子。宗教的活動の自粛を要請されていたが、人々はマスク着用、互いに3フィートの距離を保ちながら祈りを捧げた(写真:AP/アフロ)

(PanAsiaNews:大塚 智彦)

 インドネシア保健省によれば、3月20日現在、同国内の新型コロナウイルスへの感染者数が369人、死者は32人にのぼっている。

 3月2日にインドネシア人の国内初の感染者が報告されて以来、政府はあの手この手の感染拡大防止策を次々と打ちだしているが、その大半が目の前で起きている事象への対応に追われるいわゆる対症療法ばかりで、有効な手を打てない間に感染者が急速に増えてしまっている。

 初めての感染者が確認されてから10日後の13日時点では感染者は69人、死者は4人と、保健省が発表する数字はまだ国民が懸念するほどの増加ペースではなかった。ところが2週間が経過した16日には134人の感染、5人の死亡と急激な増加傾向を示すようになった。

 さらにその後は一気に急増し始めて19日に感染者数が300人を突破し、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国の中で感染者数ではマレーシアに次いで2番目、死者に至っては最も多い国になってしまった。

 同じASEANのタイ、フィリピン、シンガポールなどでは次々と感染者が報告され、各国政府が必死の対応策に追われる中、インドネシアは3月2日まで「感染者ゼロ」を続け、実質的な感染対策を怠ってきた。そのツケが一気に回ってきて慌てて動き出したインドネシア政府は、打つ手打つ手の多くが裏目に出ている。

感染者激増も国民生活は普段通り

 ところが国民性のせいなのか、そうした政府の対応の不十分さに対して国民の大半は今回の事態を「神が与えた試練」ととらえる傾向も根強い。

 また政府が「外出自粛」「在宅勤務」「自宅学習」「国内外の旅行自粛」という方針を打ち出しているにも関わらず、一般市民は買い出しに出かけており、商店ではマスクやティッシュペーパー、トイレットペーパーなどの生活必需品、米、卵、ニンニク、玉ねぎなどの食品が品切れや品薄、あるいは価格高騰という事態になっている。