昨年8月、Tokyo Robot Collection に登場した小池百合子・東京都知事(写真:Motoo Naka/アフロ)

(黒木 亮:作家)

 これまでたびたび週刊誌などでも取り上げられながら、決定的な証拠を突き付けるまでには至らなかった小池百合子・東京都知事の「学歴詐称疑惑」。アラビア語やエジプト事情に疎い日本のメディアは小池氏の学歴詐称疑惑の追及に消極的で、このままでは、この疑惑は、永遠に疑惑のまま終わってしまうかもしれない。

 小池氏の「お使い」レベルのアラビア語を聞けば、カイロ大学卒業という学歴は即座におかしいと分かる。筆者はアラビア語を学び、エジプトの大学(カイロ・アメリカン大学大学院中東研究科)を卒業した者の責務として、複数回の現地取材を含む調査で疑惑を徹底検証した。その結果、小池氏がカイロ大学の卒業要件を満たして卒業したという証拠、印象、片鱗は何一つ見出せなかった。

 これまで他のメディアが報じてこなかった小池氏の「学歴詐称」を徹底検証するレポートの第5弾をお届けする。

(前回記事はこちら)
徹底研究!小池百合子「カイロ大卒」の真偽〈4〉「不正入学」というもう一つの疑惑
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58869

「小池氏に関する書類を出すのは学長の承諾が必要」

 本連載の第3回で、カイロ大学をはじめとするエジプトの国立大学では、卒業証書の不正発行が横行していると書いた。

 ただし、カイロ大学は対外的信用を維持するため、サダト・ムバラク時代の“不正卒業証書”の事実には口を閉ざしている。過去にそうした不正があったことを認めれば、“不正卒業証書”を受け取った国内外の政治家、有力者、その関係者に影響が及ぶからだろう(特にサダト時代は数が多く、影響は計り知れないのではないかと思われる)。小池氏のようにエジプトに多額のODAを供与している先進国の政治家が実は卒業していないとは口が裂けても言いたくない。

 カイロ大学の現文学部長アフメド・シェルビーニ氏は、「カイロ大学では2年前から小池氏に関する書類を出す場合は学長の承諾が必要になった」と言う。

 通常ルートで正々堂々と卒業したのであれば、このような承諾は要らないはずである。また筆者が取材をしたカイロ大学の職員の1人は「小池氏の件は、政府の上層部が関与しているのではないかと思う」と話した。

カイロ大学文学部の建物内部(筆者撮影)