難産の末、米議会で景気対策法案が通過した。上下両院は対策規模の異なる法案をそれぞれ可決していたが、最終的に7890億ドル(約72兆円)で決着。オバマ大統領は「2月16日までに」という公約を果たし、最初のハードルを越えた。しかし、自動車ビッグ3救済や金融安定化などでは、政府資金投入をめぐり議会内で意見が鋭く対立しており、ホワイトハウスと与党・民主党は綱渡りの議会運営を余儀なくされそうだ。
なぜ綱渡りが続くのか。下院では民主党だけが賛成票を投じ、共和党はゼロ。上院でも民主党は全員賛成したが、共和党の賛同者がわずか3人にとどまり、61対37で可決した。定数100人の上院でフィリバスター(議事妨害)を阻み、安定可決できる60票を辛うじて超えただけで、「民主VS共和」の党派対立が改めてクローズアップされた。
ところで、なぜオバマ大統領と民主党は「2月16日まで」と期限を切り、法案通過を急いでいたのか。翌17日には、ゼネラル・モーターズ(GM)とクライスラーが、40億ドルの追加救済資金を獲得できるためだ。ブッシュ前政権時代、再建計画の内容が認められれば、両社は追加資金を得られると決定されていた。
前々回の当コラムでビッグ3救済をめぐり、共和、民主両党間の「南北戦争」勃発を紹介した。南部出身の共和党保守派は政府資金投入に反対であり、今回も議会で大きな火種となるのは必至。オバマ政権は間違っても、デトロイト救済と景気対策法案の審議を同時進行するわけにいかなかった。
それにしても、「党派対立解消」を強く訴えてきたオバマ政権が、むしろ対立を深めるような議会運営を余儀なくされ、ワシントンらしい政局になった。就任演説の際にも、オバマ大統領は「大きな政府でも、小さな政府でもなく、機能する政府を」と訴えていた。ところが、明らかに民主、共和両党は「大きな政府か、小さな政府か」をめぐるイデオロギー対立に陥っている。
脳腫瘍で療養中、ケネディ議員も駆けつけ・・・
ケネディ上院議員は闘病中〔AFPBB News〕
米議会の動向を注意深く見ていた人は、2月11日の「61対37」という上院票決の数字と、景気対策の規模を示す「8380億ドル」という数字に違和感を覚えたはず。なぜなら、2月6日の時点では上院案の規模は9370億ドル。ところが、ダービン上院議員(民主)が穏健派の超党派グループが7800億ドルへ大幅減額することで合意するとの見通しを示し、日本でも大きく報道されていたからだ。
ところが2月11日の採決では、7800億ドルから500億ドルも上積みされたため、共和党からの賛同者はわずか3人。可決に必要な票を確保するため、民主党が脳腫瘍で療養中のケネディ上院議員を呼び寄せるほど、綱渡りの採決になった。
共和党が民主党の景気対策法案に反対する理由は(1)歳出規模が大き過ぎ、景気浮揚に直接関わる減税分が少ない、(2)半面、景気刺激効果の薄い公共事業が大きい―などだ。オバマ大統領と選挙を戦ったマケイン上院議員の主張する法案は減税が主体のため、4000億ドル規模にすぎない。これが共和党保守派の基本ラインであり、彼らは「いたずらに出費を重ね、孫子の世代に我々のツケを押し付けるな」と主張して譲らない。
選挙後、「協力」を約束したマケイン氏だが〔AFPBB News〕
共和党ではマケイン議員は「一匹狼」であり、数々の超党派協力の実績を誇り、選挙後はオバマ大統領に協力を約束していた。にもかかわらず、今回は「超党派とは言えない」と苦言を呈している。
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