11月6日、2019年の7-9月期決算を発表するソフトバンクグループの孫正義会長兼社長(写真:アフロ)

 トランプ大統領の演説と熱狂的な支持者の様子を見ていると、スピーチ力があれば破壊的パワーで世界すら揺るがせる怖さを感じてしまう。言いたい放題に感じられるスピーチが、支持者を惹きつける理由は何か?

 内容なのか、技術なのか?

 解明のヒントは、赤字決算で注目を集めたソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義さんの中間決算会見でのスピーチに隠されている。

孫正義のスピーチ力を解剖する

「今回の決算は真っ赤っかの大赤字・・・」「ボロボロでございます」と隠しようのない結果をまずあけすけに語る。

 ソフトバンクは危ないのではないか?という投資家の不安の声をこれでもかというほど羅列した挙句に、「こういう評価はある意味で正しい」、「少なくとも市場はそう思っている」と、聴衆の感情を肯定してみせる。普通だったらいきなり反論を始めたくなるところを、いったんすべて肯定してしまうのだ。

 こうした発言をされるとかえって投資家は「少なくとも孫さんは、自分の憤りや不安を全部わかってくれているのね」と瞬間、心がおだやかにさせられる。

 しかも、大赤字と言いながら自信ありげに、ニヤリと笑ってみせるのが役者だ。投資家は儲けたいと思っているが、経営者に期待しているのは「強さ」だ。そこを孫さんは外さない。