11月10日に行われた「祝賀御列の儀」(写真:ロイター/アフロ)

 5月1日に始まった新天皇の即位に関する主要な行事は、同日の「剣璽等承継の儀」「即位後朝見の儀」から、5月4日の一般参賀、10月22日の即位の宣明「即位礼正殿の儀」と「饗宴の儀」、そして11月10日のパレード「祝賀御列の儀」をもって終わった。

 上皇・上皇后が即位された30年前の小旗と歓声でパレードを見守る様とは格段に異なる様相を見せた。

 IT技術の発達はインターネットやスマートフォンなどを普及させ、片手に小旗を持ち、もう一方では写真を撮ったり、映像を見る姿が散見される状況であった。

 自衛隊OBの筆者らは、パレードを一目見ようと沿道に並ぶ人々に小旗を配布するボランティアとして参加する貴重な機会をいただいた。

 5月の一般参賀でも同様の機会を得たが、いかに多くの国民が皇室に愛着を抱いているかを身をもって感得できた一方で、考えさせられる一事もあった。

大御心と大御宝

 陛下が国民を大事に思われる御心は、宮中祭祀や地方行幸で表わされる。

 5月の参賀の折に気温がどんどん上昇していったことから、午後からの参賀者にはお言葉に「暑い中にも・・・」を追加され、また最後の参賀は雷雨の予報から少々時間を繰り上げて実施されたことからも分かる。

 同様にパレード前日に行われた「国民祭典」で二重橋にお立ちになった陛下は、「今日は寒い中にもかかわらず・・・」と述べられた。

 天皇は国民を「大御宝」(おおみたから)との思し召しから、国民に対して「大御心」(おおみごころ)で接されておられるということであり、お言葉の追加や参賀の時間変更はこうした御心の具象であるに違いない。

 先の一般参賀と今回のパレードに裏方として奉仕して強く感じたことは、天皇は存在されることに意義があり、天皇あっての日本であるということである。

 遠くからぼやっとでもお姿を拝見しただけで、いや見えないでも現場の雰囲気から得も言われない感情を抱かないではおれない。