かつて織物産地として栄えていた愛知県の旧木曽川町(現・一宮市)では、繊維産業の衰退に伴い、倒産・廃業する企業が後を絶たない。こうした状況を打破しようと、木曽川商工会経営指導員の田中明人氏とシバタテクノテキス取締役の柴田和明氏が、1年ほど前から毎月1回、既存の技術を生かした新しいビジネスの構築に向け2人だけの勉強会を始めた。

 まず取り組んだのは、地元イベントへの積極的な参画を通して木曽川町の魅力をPRするとともに、木曽川町の未来を真剣に考える仲間を増やしていくこと。

 昨年1月には中部国際空港の物産展で木曽川町産の糸や生地を出品。また昨年4月には一宮市本町商店街で開催したイベント「やろまい」で、子どもが布で手芸するブースを出店し、参加者の注目を集めた。地道な活動だったが、噂が広がるにつれ、仲間が少しずつ増えていった。

 さらに「木曽川産業クラスター創生協議会」(柴田和明会長)として正式にプロジェクトチームが発足。レギュラーメンバーは9人で、平均年齢は30歳代半ばと若い。生地メーカーをはじめ、名古屋市立大学大学院生や元銀行員で名古屋モード学園講師も加わるなど、多士済々な顔ぶれだ。

 今年1月11日現在で、すでに具体的な案件が数件出てきており、このうち2件が試作品の完成まで進んでいる。小さな明かりだが、少し見えてきた。地域経済を活性化させる大きな流れになるだろうか。

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 同協議会は、「自分たちの技術をどうすれば新しい分野に応用できるか」をテーマに内部で議論するとともに、修文大学短期大学部、尾張繊維技術センター、尾北毛織工業協同組合情報委員会などにも協力を呼びかけた。

 こうした外部への働きかけがきっかけとなり、昨年9月には愛知県内のある工作機械メーカーから「産業用ロボットの高機能化で、ロボットに搭載する映像信号の処理能力が限界に近づいている」という話を受けた。