内部にサファイア鏡を搭載したKAGRAのクライオスタット。4カ所あるうち、Yアームの付け根にある装置。この上に14mの防振部が伸びている。(提供:東京大学宇宙線研究所)

 2015年9月、人類史上初めて重力波の検出にアメリカのグループ「LIGO(ライゴ)」が成功。約13億光年先で2つのブラックホールが合体したことにより発生した重力波を観測し、ノーベル物理学賞を受賞した。現在はLIGO 2台と欧州(イタリア)の「Virgo(バーゴ)」の合計3台が観測中で、週に1回ほどの割合で重力波が観測されているという。

 この重力波望遠鏡ネットワークに、いよいよ日本の重力波望遠鏡KAGRAが加わる。今日、10月4日には日米欧の重力波望遠鏡の代表者が集まり、KAGRA完成記念式典と研究協定の調印式が開催されるのだ。

 KAGRAが参加することによって、重力波の発生源を初期の数十分の1まで狭めて特定することができる。発生源が分かれば、即座に光の望遠鏡を向けさまざまな手段で追観測する「マルチメッセンジャー」天文学が可能になる。また、重力波を使えば光やエックス線のような電磁波では観測できない、宇宙誕生の瞬間まで知ることができると期待される。重力波は人類が手にした「新しい眼」というわけだ。

 だが、その眼は巨大かつ超精密な制御が求められ、完成までの道のりは容易ではなかった。重力波望遠鏡は「望遠鏡」と言いながら、従来の望遠鏡とはかなり異なる。数kmの真空パイプの中にレーザー光を走らせ、鏡で反射させて精密に計測。重力波が発生すると空間がごくわずかに伸び縮みするが、そのわずかな変化を検出するのだ。

東京大学宇宙線研究所 重力波観測研究施設長 大橋正健教授。

 KAGRAが他の重力波望遠鏡と異なるのは2つ。

「第一に地下にあること。重力波観測に一番邪魔なのは振動ですが、地下は環境的に安定しています。もう1つは鏡を冷やすこと。私たちの周りにあるものは温度があると揺らぎます。そこでレーザー光を反射する鏡にはサファイア鏡を使い、マイナス253℃まで冷やすことで、鏡の動きを凍らせる。じっとさせて時空の微小な動きを見ます」(重力波観測研究施設長 大橋正健教授)