ニューヨークで開催された「第74回国連総会 気候行動サミット」の様子(2019年9月23日撮影、写真:TT News Agency/アフロ)

(池田 信夫:経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長)

 国連の気候行動サミットで話題を呼んだのは、スウェーデンの高校生、グレタ・トゥーンベリの演説だった。彼女は去年(2018年)から学校を休んで世界各国でデモに参加し、これまでにもイギリス議会、フランス議会、EU議会、アメリカ議会、COP(国連気候変動枠組条約会議)などで演説してきた。

 16歳の高校生が、世界各国の議会や国際機関で演説するのは異例だ。この背景には、グレタを「人類の未来の代表者」として利用する世界の環境NGOの動きがあるが、彼らの運動で世界の環境はよくなるのだろうか。

豊かさが命を救う

 グレタの演説は絶叫調で、その内容は単純である。

人々は苦しんでいます。人々は死にかけています。生態系全体が崩壊しています。私たちは大量絶滅の始まりにいます。それなのにあなたがたが話すのは、お金と永遠の経済成長のおとぎ話ばかり。よくそんなことがいえますね!

 地球温暖化で人類を含む生物が「大量絶滅」するというのは誤りである。人類は絶滅どころか、人口が激増している。地球上の種が減るという意味の大量絶滅は起こっているが、その原因は温暖化ではなく、人類が環境を破壊してきたことだ。1970年から今までに行われた環境破壊は、4℃の気温上昇に匹敵する。

 人類以外の多くの動物にとって地球環境は悪化しているが、人類の生活環境は大きく改善された。産業革命前には人類の94%が1日の所得が2ドル未満の最貧層だったが、今は最貧層は10%以下になった。乳幼児死亡率は43%から4.5%に下がった。

 生活環境が改善した最大の原因は、豊かになったことだ。日本の最近の災害で被害が最大だったのは、昨年の西日本豪雨の死者227人だが、1959年の伊勢湾台風の死者は5238人だった。昔の台風の被害が大きかったのは台風が大きかったからではなく、堤防などのインフラが整備されていなかったからだ。