病院で手術を受ける人

 あなたが医者にかかる際、当然医者はあなたの病状や薬剤の科学的根拠に基づいてベストな治療を提案してくれていると信じていることだろう。

 しかし、もし医者が、あなたの病状ではなく、製薬企業からの謝金や高級弁当に基づいて処方を決めていたとするならばどう思うだろうか。

 これは決して絵空事ではない。現に米国においては、「Open Payments Program(オープン・ペイメント・プログラム)」の開始以降、製薬マネーによって、製薬企業を利するような処方が増加したことが様々な系統の薬剤において明らかとなっている。

 このような製薬企業と医師の金銭的な関係がとりわけ問題となる疾患群の一つががんである。

 他の疾患と比較した際、一つひとつの薬剤の価格が高く、その効果や安全性が患者の命にダイレクトに影響するからである。

 このような背景のもと、私たちの研究グループは、がんの薬物療法を専門とする医師にどの程度の謝金が支払われたかを明らかにするために調査を実施した。

 その結果が、2019年9月に英国の医学誌「BMJ Open(イギリス医学誌オンライン版)」に掲載されたので、報告したい。

 調査において対象としたのは、2016年4月時点で日本臨床腫瘍学会が認定するがん薬物療法専門医だった医師1080人である。

 彼らが、2016年度に日本製薬工業協会に加盟する78社から支払われた謝金を調査した。

 具体的には、医師向けの講演会や勉強会の講師を務めたことに対して支払われる謝金、製薬企業からの委託で文章を執筆したことに対して支払われる謝金、さらに、製薬企業が販売する医薬品に対してのコンサルティング事業に対して支払われる謝金である。

 なお、これらの企業は日本の医薬品の売り上げのおよそ81%を占めている。