イスラエルの経済の中心地、テルアビブの夜景(資料写真)

 ベンチャー起業家に未来の読み方を聞く企画、今回は2008年にベンチャーキャピタル「サムライインキュベート」を創業した榊原健太郎社長に話を聞いた。リーマンショック直後から日本でシード投資(アイデア・事業計画段階での起業家への投資)を行ったほか、現在はイスラエルのスタートアップにもシード投資し、「アフリカのシリコンバレー、シンガポール」を目指すルワンダからアフリカにも進出し、ウガンダ、ケニア、南アフリカにも投資する同社。この独創的な動きはどのような経営哲学によってもたらされたものなのか。(企業取材集団IZUMO)

ノウハウなき起業が「飛躍」をもたらす

 榊原氏が独特の道を歩んできた理由は、彼が「連続性を持たない」経営者だからかもしれない。1997年、関西大学卒業後に医療機器メーカーへ就職、創業期のITベンチャーへと転職、その会社が買収されたのちに、次に大手広告代理店のグループ会社に転じ、そして、またその創業期のITベンチャーへ復職。だがそれでも“今の自分が本当の自分のような気がしない”と、彼は転職先を探してスタートアップ企業を訪ね歩いた。その時、ふと気づいたと言う。

「様々なベンチャー企業を訪ねるうち、“自分自身が起業し、リードする立場でないと今までの自分となんにも変わらない。人生を通じて自分が存在したことでどれだけ世の中を変えられたか、という幅を大きくしたい”と気づいたんです。もしスティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグがいなければ、世界は今と大きく異なっていたと思いませんか?」

 2008年、彼は転職活動をやめ、これまでの営業経験やアライアンスをつくってきた実績を生かすべくスタートアップ向けのコンサルを始めた。そして、その1年後、彼は一軒家を借り「サムライハウス」を立ち上げた。

「スタートアップ――当時の“ベンチャー企業”の現場を見ると、ノウハウがないし、起業家同士で悩みを相談する場所もない。そこで、ベンチャーのオフィス代も抑えられるかな? と、今で言うコワーキングスペースをつくったんです。仲間とは、業務用の焼きそばの麺を“これが一番安いから”と買ってきて一緒に食べるほどの距離感で仕事をしていました」

サムライインキュベートの榊原健太郎社長