9月9日、曺国氏(右)を法務長官に任命した文在寅大統領(右から2人目。写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 9月9日、ついに文在寅大統領は、「玉ねぎ男」(むいてもむいても新たな疑惑が噴出する男)と綽名される曺国(チョ・グク)ソウル大学教授(54歳)を、法務長官(法相)に任命した。これによって韓国は、「青瓦台」(チョンワデ=韓国大統領府)vs検察のガチンコ対決という、まるで内戦のような様相を呈してきた。

 曺国・新法務長官については、日本でも連日、微に入り細を穿って解説されているし、韓国の内政に干渉するつもりもないので、論評は他に譲りたい。私が懸念するのは、今回の文在寅大統領の任命強行が、今後の東アジア情勢にも影響するリスクだ。

曺国氏任命が東アジアを不安定化させかねない理由

 まず日韓関係だが、韓国の趙世暎(チョ・セヨン)外務第一次官は8月23日、長嶺安政駐韓日本大使に、日韓のGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の破棄(韓国的に言えば「終了」)を通達した。それによって、このままでは11月22日に失効する。

 この問題に関して、韓国の李洛淵(イ・ナギョン)首相は8月26日、国会でこう述べた。

「GSOMIAの終了は、日本が根拠も示さず、韓国を安全保障上信頼できない国であるかのようにレッテルを貼り、輸出優遇国のリストから韓国を外したためだ。日本の不当な措置が元に戻れば、わが政府もGSOMIAを再検討することが望ましい」

 つまり、7月1日に日本の経済産業省が、韓国を「グループA」(旧「ホワイト国」=輸出優遇国)から除外すると発表したことと関連づけた。換言すれば、日本が貿易問題を引き下げることと、韓国も防衛問題を引き下げることをワンセットにしようということだ。