原子力発電所の事故が発生してから、現場では必死の対策が行われてきました。しかし、私たちが直接的に何かできるわけではありません。現場で危険を顧みず頑張ってくれている人たちに、「お任せするしかない」状況です。

 事故発生直後から、テレビでは発電所の建物が爆発したり、水蒸気を噴き出したり、放水車が放水したりする映像が映し出されました。東京電力や政府関係者がたびたび記者会見を開きますが、その内容からは、発電所の状態や放射能被害の実態がよく分かりません。私は少しでも状況を把握しようと、寝る直前までネットで情報を収集する日々を過ごしました。

 でも、これはよく考えると、ふだん医療を利用する人たちにとっても同じような状況なのではないかと思えたのです。

 現場で必死に頑張る人たちがいる一方で、「本当に大丈夫なのか」と不安に思う人たちがいます。復興と再生のためには、お互いの立場への理解を深めることがとても重要なことだと思えてなりません。

院長は本当に「患者を置き去りにした」のか

 発電所への放水作業や、ポンプを動かす電源の復旧作業は、強い放射線にさらされる極めて危険な状況の中で行われています。

 作業に当たっている人たちの中には、家族が被災した方もいることでしょう。しかし、使命感を持って、懸命に作業をしているのです。

 そんな中、菅直人首相が東京電力へ乗り込んで「(職員の原発からの)撤退などあり得ない」と発言したり、海江田万里経産相が東京消防庁職員に「(速やかに放水しなければ)処分する」と発言した、などという報道がありました。

 もしも本当に撤退が必要な状況であれば、適切な専門家たちを集めて早急に対策を検討し、作業員に必要な防護服や機器を手配しなければなりません。現場を叱責して解決できることではありません。