ツムラの漢方薬「桂枝加芍薬湯」(wikipediaより)

 漢方生薬はどのように効くのか。日本漢方の真髄と東洋思想医学の可能性について、修琴堂大塚医院院長の渡辺賢治氏がありのままの漢方の姿を伝授する。(JBpress)

(※)本稿は『漢方医学』(渡辺賢治著、講談社学術文庫)より一部抜粋・再編集したものです。

1人1人に合わせた治療

 漢方医学と聞いて、どのような印象をお持ちになるであろうか? 古臭い、前時代的、迷信、過去の遺物などなどいろいろなイメージが浮かぶと思う。

 漢方では、関節リウマチであっても1人1人、また昨日と今日ではその性質が違うと考える。こうしたきわめて東洋的な考え方は、これからの医療を考える上で重要であろう。

 西洋の文化が直線的で四角定規であるのに対し、東洋の文化は曲線であり、円である。わが国が担うべきは、単に薬といった物質的なものだけでなく、文化的・精神的な考え方もひっくるめた、真の東西医学の融合ではないだろうか。

漢方との出合い

 私自身は、漢方に対する漠としたあこがれを持ってこの世界に入った。

 中学生になった私は、ブルース・リーの映画を見て少林寺拳法を習い始めた。師匠は創始者の宗道臣(そうどうしん)先生の高弟であった。東洋的な思想に興味を持ったのは、その先生の影響が大きい。

 すぐ上の兄が医学部に進学していたので、私は弁護士を目指して文系の道に進もうと思っていた。ちょうどそんな時、父が読んでいた雑誌に「西洋医学は細分化され、木を見て森を見なくなってしまった。その反対に森を見る医学が漢方である」という文言が目に入った。

 それを見て、これこそ私のやりたいことだと思った。高校3年生になる直前に文系から理系に転じて医学部を目指した。