写真左より、小沢匠氏、片山旭氏、田中圭氏、永淵恭子氏

 BtoBマーケティングの祭典「Bigbeat LIVE」(ビッグビート主催)が8月2日、東京ミッドタウン日比谷で開催された。総勢750名を超える申し込みにより、2つの会場は満席。そこで展開された6つのセッションには多様な領域から参加者が集結し、これからのマーケティングの可能性をインタラクティブに語り合う場となった。その中から「共感」をテーマに2時間半にわたって行われた2nd Stageの模様、そのダイジェストを紹介する。

技術や仕組みだけでは動かないヒトを「共感」で動かす

アドビ システムズ株式会社
常務執行役員 カスタマーソリューションズ統括本部長
小沢 匠 氏

「今から5分間、隣の席にいるかたを相手に、ご自身の共感体験について語り合ってください」

 2nd Stageのホストであるアドビの小沢匠氏は冒頭、場内のオーディエンスにこう呼び掛けた。昨今のビジネス系トークイベントではよく見かける光景だが、ここでは重要な意味が持たされていた。5分後、小沢氏は再びマイクを手にして語り始めた。「皆さん、5分前とは見違えるくらい変化していますね」と。そして「これが共感というものの力なんです」と持論の展開を開始。

小沢匠氏(以下、小沢氏)「皆さん笑顔を浮かべ、うなずき、身体の向きや姿勢まで変えてコミュニケートされていましたよね。その結果、たった5分でこの会場全体のムードまで前向きなものに変化しました。自分を承認してもらえることや、自分の話に共感してもらえることの喜びがこの空気を作ったのだと思います。そしてこういう現象をビジネスの現場で起こしていくことが私の使命なのです。これから3人の登壇者の方々が、それぞれの経験をもとに『共感』がもたらす力や可能性について語ってくれますが、まずは私の経験談をお話ししたいと思います」

 アドビは近年、ソフトウェア領域の先陣を切る格好でプロダクトの提供スタイルをサブスクリプションモデルへと大きく変容。モノ(パッケージ)売りからコト(サービス)の提供をコアとするビジネスへと舵を切った。この変革局面の中でカスタマーサクセスマネジメント部の変革を一任されたのが小沢氏。市場が求めるビジネスモデルのディスラプションに対して組織変革を推進する中で痛感したのが、最前線の混乱だったという。

小沢氏「あらゆる局面にいる社員たちの働き方を変えていかなければいけない中、特に製品をご購入いただいた既存のお客様のご契約状況を注視するアカウントマネージャというアドビ視点だった業務を、カスタマーサクセスというお客様の成功を追求するというお客様視点の役割に変わることが求められていました。もちろん私たちは今や様々なフレームワークやツールを駆使してお客様への営業やサポート活動をしているわけですが、何よりも重要なのは、第一線で働く仲間たちを新しいカスタマーサクセスという新しい役割に自らが変化していくことへ巻き込み、共感を軸に主体性をもって動いてもらうこと。どんなに優れたテクノロジーや仕組みがあっても、一人ひとりが腹落ちし、進むべき方向に納得と共感をしていなければ、どんな変革も成功しません。BtoBマーケティングの対象であるお客様についても同じこと。いわば、あらゆるヒトを動かすオーケストレーションこそがカスタマーサクセスの使命。そう実感しながら当時から今も常に進化し続けるための試行錯誤をしている最中です。そこで、これからフィールドの異なる3人のマーケターが披露してくれる『共感マーケティング』についての話を通して、ここにいる皆さんの変化や組織・チームの変革のきっかけになればと思っています。」