南シナ海をパトロールする米空母ロナルド・レーガンに発着する「E-2ホークアイ」(2019年8月6日、写真:AP/アフロ)

 南シナ海は、世界の海上輸送量の3分の1が通過する海域であり、戦略的に重要な位置を占めている。

 中国は、南シナ海における航行および上空飛行の自由は確保されていると主張している。現実には、中国が本土および南シナ海人工島を起点とする濃密な監視網を構築している。

 南シナ海における海洋状況認識(Maritime Domain Awareness: MDA)能力は、中国に地理的優位性があると言える。

 また、秘密のベールにつつまれているが、中国は海中における状況認識の構築も進めているであろう。

 中国海事局は、6月29日から7月4日までの間、南シナ海において航行禁止海域が設定されたと伝えた。米国国防省は、この海域に中国が対艦弾道ミサイル6発の連続発射(サルボー発射)を実施したことを明らかにした。

 対艦弾道ミサイルについては、その能力を過大に評価し「ゲームチェンジャー」とするものから、「絵に描いた餅」と過小評価するものまで、その見方は幅広く存在する。

 過小評価する根拠として指摘されているのは、広大な洋上を行動する艦艇の正確な位置を把握し、それを継続追尾することが現在のテクノロジーでも困難であることである。

 しかしながら、宇宙や電磁波、さらには無人機といった新たなプラットホームを利用した手段が充実するにつれ、複数の手段を融合した海洋監視能力が向上してきたことも考えなければならない。

 以下、中国はなぜ南シナ海で対艦弾道ミサイルの発射実験を行ったのか、なぜ6発を連続発射したのかについて考察し、中国の狙いを明らかにする。

 そして、南シナ海での中国の動きに対し、牽制策についての一案を述べる。