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「花粉を水に変える」との触れ込みで販売していたマスクについて、消費者庁が対策に乗り出した。製品を製造していたメーカー4社に対して措置命令を実施したが、各社の対応はくっきり分かれている。アイリスオーヤマは消費者に誤解を与える表現があったとして謝罪したが、大正製薬は「科学的根拠をまったく無視したものであり、法的措置を検討する」との声明を出しており、政府を相手にかなりの強硬姿勢を見せている。(加谷 珪一:経済評論家)

花粉が水に変わるという表現は妥当か?

 消費者庁は2019年7月4日、「花粉を水に変える」とうたったマスクが景品表示法に違反(優良誤認)しているとして、製品を製造している4社に対して、措置命令を行ったと発表した。措置命令の対象となったのは、DR.C医薬、アイリスオーヤマ、大正製薬、玉川衛材の4社。

 各社は、光触媒の効果によってマスクの表面に吸着した花粉やウイルスなどが分解され、体内に吸収されることを防ぐ効果があるかのような説明をしていた。同庁は各社に対して合理的な根拠を示す資料の提出を求め、内容を検証したが、裏付けとなる根拠が認められなかったため、措置命令に踏み切ったとしている。

「花粉を水に変える」というマスクについては、以前からネット上などで、表現が過大ではないかとの指摘が出ていた。

 細かい表現は異なっているが、各社に共通しているのは光触媒の一種である酸化チタン(一部商品はハイドロ銀チタンと表現しているが、おそらく酸化チタンのことを指していると思われる)を含むフィルターをマスク内に組み込むことで、花粉やウイルスを水に分解するというメカニズムである。花粉やウイルスは、基本的に有機物なので、これを触媒の作用によって分解することで無毒化するということらしい。

 自然科学の専門教育を受けた人ならピンとくると思うが、触媒を使って有機物を分解すること自体は不可能ではない。だが「花粉が水に変わる」という表現については、違和感を覚える人が多いのではないかと思われる。