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 米中貿易交渉に進展が見られないことから、貿易戦争の長期化が懸念され始めている。20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)に出席したトランプ米大統領は、対中追加関税の発動について先送りを表明したものの、交渉妥結の見通しは立っていない。これまでのところ、中国への打撃が大きく、米国はそれほど大きな影響を受けていないが、高関税が長期化した場合には、米国への影響も無視できなくなる。以下では、貿易戦争が長期化した場合の影響について考察する。(加谷 珪一:経済評論家)

中国が最初に打撃を受けたのは当然の結果

 これまでのところ米中貿易戦争は米国の圧勝という状況が続いている。製品の輸入に高い関税をかけた場合、貿易が停滞し、双方の経済にとってデメリットになるというのが一般的な解釈である。だが貿易の絶対量の違いや、輸出入がGDP(国内総生産)に占める割合などによって、経済への影響度合いは変わってくる。

 米国は中国から年間約58兆円の製品(サービス含まず)を輸入しており、中国には約13兆円を輸出している(2018年)。差し引きの貿易収支は45兆円の赤字となっており、トランプ政権はこれを問題視し、中国に対して貿易赤字の改善を要求している。

 1カ国から58兆円も輸入していると聞くと、GDPの規模が550兆円しかない日本からすると巨額に思えるが、米国のGDPは2200兆円もあるので、米国経済全体からすれば中国との貿易はそれほど大きな項目ではない。ちなみに米国全体の輸入総額は約275兆円である。

 一方、中国経済は年々消費市場が拡大しており、貿易に対する依存度は低下しているが、米国と比較すると貿易に頼る部分が大きいというのが実状だ。