6月15日、スウェーデンを訪問し、ローベン首相と記者会見に臨む韓国の文在寅大統領(写真:ロイター/アフロ)

 韓国最高裁での判決から約8カ月――文在寅(ムン・ジェイン)政権が徴用工訴訟をめぐる「解決策」をようやく日本側に提案した。だがこれは、すでに韓国の日本専門家の間で数度にわたって議論されていた「日韓企業が基金を設立し、被害者に補償金を支給する」という案だ。周知の通り、日本政府は直ちに拒否の意思を明らかにしたが、韓国内でも世論と市民団体からの強い批判に晒されている。

日本が拒否することを知りながらの「提案」

 保守派日刊紙「東亜日報」は、韓国政府が19日に公開した提案は、例の最高裁判所の判決直後、専門家たちから提案されたものであり、そもそも大統領府が今年1月に「発想自体が非常識だ」と拒絶した案だ、と皮肉った。それに、今回の案を提案するにあたって、被害者側との接触や意見交換がなかったことに触れ、「慰安婦被害者の意見収集なしに推進したという理由で、現政府が解散を決めた『和解・癒やし財団』と違いがないのではないかという批判も提起されている」と酷評している。

 同じく保守系日刊紙「文化日報」は、複数の外交消息筋の話を引用して、16~17日に日本を訪問した趙世暎(チョ・セヨン)外交部第1次官がこの案を内々に打診した際、日本側はその場で拒否していたと伝えている。

「韓国政府は、日本が拒否することを知っていながら、『見せかけ』の次元で急いで提案を発表したとの批判もある」、「相手国の反対に対して、改善案の打診や追加協議などを経ることもなく、一方的に発表したのは外交慣例上、極めて異例との指摘もある」と、遠回しに批判。

 さらには、大阪G20会議と米韓首脳会談を控えた「国内世論戦」向けの方策であり、「被害者側と協議もなしに発表したことは、文在寅政府が話してきた被害者中心主義とも全く異なる結論」と皮肉った。