米海軍の強襲揚陸緩「ワスプ」とアーレイバーク級駆逐艦(写真:米海軍)

(北村 淳:軍事社会学者)

 2019年6月2日、米国防当局(極東出張中のパトリック・シャナハン国防長官代行)はホワイトハウスに対して、「アメリカ軍部は政治的に利用されることは拒絶する」とペンタゴンの意向を通告した。

 トランプ大統領が軍関係施設で兵士を前に政治色が濃い演説を行ったり、メキシコ国境へ軍隊を繰り出して「国境の壁」建設推進政策のパフォーマンスに軍隊を使用したりすることに対して、かねてより少なからぬ米軍当局者からは「軍隊の政治利用」ではないかとの危惧の声が上がっていた。

 このたびペンタゴンがホワイトハウスに「軍隊の政治利用は止めにしてくれ」と公式に申し入れたのは、トランプ大統領が安倍首相とともに横須賀軍港(神奈川県)を訪問した際の出来事が直接の引き金となっている。

横須賀に回航させるべきではない「ワスプ」

 5月28日、トランプ大統領は安倍首相とともに海上自衛隊ヘリコプター空母「かが」を訪問した後、アメリカ海軍強襲揚陸艦「ワスプ」で米海軍・米海兵隊将兵を前にして演説をしてから帰国の途についた。

 そもそも「ワスプ」の母港は横須賀基地ではなく佐世保基地(長崎県)である。