米国の国家安全保障専門家たちが挙げたグローバル規模の最大の脅威は「核・ロシア・サイバー攻撃・地球温暖化」。(Illustration: Sarah Grillo/AXIOS)

国家の危機を克服したケーススタディに日本も

 これまでに書いた本はすべて売れに売れた。

 人気作家のUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のジャレド・ダイアモンド教授(81)が5月、新著を出した。

 同教授は1991年に「The Third Chimpanzee」(邦訳:第3のチンパンジー)を出して以降、97年には「Guns, Germs, Steel」(同:銃、病原菌、鉄)を出してピューリッツアー賞を受賞した。

 その後も「Collapse」(同:文明崩壊)、「The World until Yesterday」(同:昨日までの世界)など問題作を次々と世に送った。

 そのすべてが日本語訳されている。NHKのEテレビにも出演、日本人にもお馴染みの学者だ。

 博士号は生理学だが、その後、文化人類学、環境学、地政学、進化生物学へと多岐にわたる分野の調査研究を続けてきた。

 新著の命題は、1人の人間が危機に直面した時にそこから抜け出す12の解決方法は、実は危機に陥った国家を救出する手立て(Approach)になる、というものだ。

 同教授は、6つの国の歴史を紐解き、いかにして国家的危機から抜け出し、安定した国家を再生したか、を実証する。

 その6つの国家とは以下の国だ。

1、第2次大戦中、旧ソ連の脅威にさらされながらも独立を守ったフィンランド。
2、黒船の襲来を受けて徳川幕府体制から明治政府に平和裏に移行した日本。

3、アウグスト・ピノチェト独裁政権を倒し、民主主義を再生させたチリ。
4、オランダの植民主義を撥ね退けて独立したインドネシア。

5、第2次大戦で崩壊したナチス・ドイツを民主化させたドイツ。
6、英国の植民地から独立を勝ち取ったオーストラリア。