「月に500冊読み、1200ページ書く」という佐藤優氏。抱えるコラムや連載など、締め切りの数はひと月あたり約90にもなるという。膨大な情報を発信し続けるなかで、情報の精度や質が下がることはないのだろうか? 今回は、佐藤氏のインプットの技法に焦点を当て、極意の一部をお届けする。(JBpress)

(※)本稿は『調べる技術 書く技術』(佐藤優、SBクリエイティブ)の一部を抜粋・再編集したものです。

情報の海に溺れてはいないか?

 インターネットは、いまや普及しきったといってよいほど、私たちの生活の一部となっている。本、新聞、テレビによる情報のみならず、スマートフォンやパソコンの画面から絶えず膨大な情報が飛び込んでくる。まさに情報過多時代だ。

 情報過多時代においては、溢れるなかから必要な情報を「調べ」、それをもとに「書く」といった技術がより重要となる。これら一連の取り組みを「知的生産術」という。

 絶えず膨大な情報が飛び込んでくる時代、いかにインプットする情報や知識を選別し、質の高いものを得るか。そして知り得た情報や知識を、どのようにアウトプットに生かすか。情報の海に溺れていては、確たるものは何も得られず、ひいては何も生み出すことができない。「知的生産力」は人生の質を左右するとみて間違いない。

「調べる」と「書く」は表裏一体

 重要性の高まる知的生産力を自分のものにするためには、まずはインプットの質を高めることだ。インプットというのは、先にも述べたように情報や知識を「選別」するということである。

 選別することにより、インプットの質を高めたからといって、すぐに知的生産力も高まるかというと、そうではない。「生産」というからには、インプットの成果として何かしら生み出さなければ、せっかく知り得た情報や知識も無用の長物となってしまう。

 インプットした情報や知識を使ってアウトプットする。この両輪がそろってはじめて情報や知識は、本当に「自分のもの」となる。この一連のプロセスを繰り返すことで、知的生産力は高まってゆく。

 つまり、何をどうインプットするかがアウトプットの「質」を決めるということを念頭に置いて、具体的にどうアウトプットするか目的をもちながらインプットに取り組む。そうやって質を高くしていくことが、知的生産力を高めるということなのである。このようにして本当の教養は身につくのだ。