公共交通機関を使うならJR宇都宮駅前から出ているバスが利用できる。次第にのどかな市街地に車窓が変わっていく中、大谷町に入りバスが北方向に進行方向を変えると、あたりの景色は一変する。やや緑がかった岩肌が覆いかぶさるように眼前に迫ってくる。

 最寄りのバス停から、ゆるやかな坂をのぼりつつ案内板通り歩いていけば、「くり抜かれた」としか表現できない形状の岩山が現れる。この風景も独特のものだが、これ以上のものが地下に埋まっている。

 ここでは1919年(大正8年)から1986年(昭和61年)までの67年間、大谷石の採掘が行われていた。跡地を何らかの形で世に残したいと、土地の所有者がオープンしたのが1979年。東日本大震災のときに安全確認のため一時的に閉鎖したが、その後運営者が変わりつつもずっと展示が続けられている。一時期は年間入場者数が10万人程度に落ち込んだものの、前述したようなさまざまな取り組みを行った結果、現在では年間約46万人を集める「観光スポット」へと変貌したのだ。

狭い階段を抜けると一気に

 大谷資料館自体はとてもシンプルな作りの建物だ。建物に入ると、坑内への入り口が右手にある。ここのアルミ製の扉を開けると、地下に通じる階段がある。

坑内は飲食禁止、禁煙。撮影は可能だが三脚は使えないなどの制限がある

 狭い階段を降りていくと、空気がだんだんヒンヤリしたものに変わっていく。年間を通じて、坑内の平均気温は8度前後。大谷資料館では上着の持参を勧めている。

暖色系の照明が坑内を印象的にライトアップしている

 階段を降り切ると一気に視界が開ける。坑内の最も広い空間が一望できる瞬間だ。坑内には採掘後に残された大きな石柱が何本もあり、全体の広さは2万m2(140m×150m)にも及ぶ。日本とは思えない異国感あふれる情景に、この場で息をのむ人も多いという。

 ただ大谷資料館、本来は大谷石の採掘現場を見てもらうもの。注意深く観察すると、積み重なった過去が浮かび上がってくる。つづきは後編で。
打倒ブラタモリ!岩肌から読み解く重い歴史
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56393

大谷資料館見学の概要
 大谷資料館の開館日や見学料金などはWebサイト(http://www.oya909.co.jp/)で確認できる。見学にあたって制限されていることや、現在の館内温度なども記載されているので、事前に読んでおいた方がいい。

 また、2019年6月1日から30日までは教会ゾーンが特別公開される。教会ゾーンの公開は期間限定のうえ、通常はライティングされているのだが、今回はライティングなしで天然の太陽光が差し込む様子を見られるという。
http://www.oya909.co.jp/release/2019/03/09/1381/