転職エージェントは「転職させる」お仕事です。なので、あなたと話をしている時は親身に寄り添ってくれるでしょうが、あなたの職業人生までを考えた転職アドバイスはしないし、出来ません。彼らが出来るのは「今ある求人情報と、あなたがマッチするか」を計り、転職候補先を紹介することだけです。

 いま私はこの原稿を、シェアスペースで書いているのですが、隣にいる3人組は偶然にも転職エージェントらしく、「どんな人でも、俺はこの企業しか今は紹介しないけどね」と言って笑い合っています。これが現状です。悪魔は天使の顔をして近づいてくるのです。最初から悪魔だと知られてしまえば、誰も近づいてきませんから。

 あなたの人生を転職エージェントの「売り上げ」の材料として切り刻まれては一生が台無しです。でもご安心ください。付き合い方を知った上で彼らと接触すれば、あなたの転職の強い味方になってくれます。

 さっそくそのポイントを解説しましょう。

転職エージェントは「押しの強いアパレル店員」

 当たり前ですが、転職エージェントの仕事は悪事や犯罪ではありません。真っ当なビジネスです。ただ、そのビジネスモデルに特徴があります。ベストセラーとなった北野唯我さんの『転職の思考法』(ダイヤモンド社)にも詳しく解説されていますが、転職エージェントのビジネスモデルの特徴を理解しておけば、上手な付き合い方が見えてきます。

 そのコツを一言でいうと「転職エージェントは『押しの強いアパレル店員』と割り切れ」ということです。

 お店で洋服を買おうと思ったら、目当てのショップに入り、まずは自分で選ぶのではないでしょうか。そこで気になるものがあれば、サイズやコーディネート、新作やお買い得を店員さんに聞くこともあるでしょう。そうすれば、まだ表に出ていない入荷や割引といったお得な情報を教えてくれることもあります。だたし、売りたい服を強引に勧めてくる店員さんもいます。その服が自分ではしっくりこないものであったら、いくら強く勧められても、みなさんはきっぱり断ると思います。店員さんは服を売るのが仕事ですから、親切そうにアドバイスしながらも、どうしても商品を強く勧めてきます。そして、それをお客さんに断られても、別に傷ついたりしません。それが彼らの仕事、日常茶飯事だからです。

 そう、転職エージェントとの付き合いからもそのノリと一緒なのです。

 ユニクロからヨウジヤマモト、アルマーニなど、目的、好み、予算に応じて訪れるショップが違うのと同様、転職エージェントも案件の得意不得意があります。まずは自分に合った転職エージェントを探すことです。人事の仕事を見つけたいならITエンジニアに強いところより、人事の案件に強い転職エージェントの方が、よりよい案件がある確率が高まります。遠慮はいりません。まずはその会社の転職情報サイトに登録してどんどん検索をかけてみることです。利用する転職サイトは一つだけでは危険です。たくさんエントリーして検索を掛けたり、メルマガ登録したりしているうちに、その転職エージェントがどんな業界や仕事に強いのかが見えてきます。そうやってメインで利用するエージェントを選んでいきましょう。

 転職サイトに応募し、チェックしたりすると転職エージェント(プロデューサーやコンサルタントなどを名乗っていることが9割)からコンタクトがあります。企業の人事から直接コンタクトもあるでしょう。そこですぐに「ヘッドハンティングされた!」と喜んではいけません。

 転職エージェントは営業です。あなたに売りつけるのではなく、あなたを売るためにコンタクトしてくるのです。