中国初の国産空母が試験航海、2020年までの就役目指す

中国遼寧省大連の港を出る中国初の国産空母「001A型」(2018年5月13日撮影)。(c)AFP〔AFPBB News

 米中の貿易戦争が抜き差しならない状況になってきた。

 4月までは、合意が近いであろうという楽観論があったが、米中がお互いに報復関税をかけ合う厳しい状況になっている。

 米中貿易戦争は本質的に米中覇権争い、さらに言えば米中ハイテク覇権争いがその本質である。

 貿易交渉がヒートアップしていた5月2日、米国防省は「2019年中国の軍事力に関する報告書*1(「2019中国軍事力報告書」)を公表した。

 この報告書は毎年発表されていて、国防省が中国の安全保障や人民解放軍(PLA)をいかに評価しているかを知ることのできる公的文書である点に価値がある。

 今回の報告書は米中の覇権争いの原因を余すことなく記述している。

 中国の軍事的脅威のみならず国家戦略、科学技術・製造技術、経済、外交、文化などの広範な視点で米国がなぜ中国を問題にしているか、米中激突の理由が理解できるように記述されている。

 中国の習近平国家主席は、「中華民族の偉大なる復興」を合言葉に世界一を目指した富国強軍路線を推進している。これに対する米国の強い懸念がある。

 習近平主席は、2016年の年初から2020年を目標年とした軍の大改革を実施し、「戦って勝つ」軍の建設を目指している。

 この改革に伴う人民解放軍のロケット軍のミサイル戦力の増強、海軍の水上艦艇や潜水艦の増強、宇宙やサイバー空間での作戦能力の向上、「北極シルクロード」を含む一帯一路構想に伴う人民解放軍の海外軍事基地の拡大などを明らかにしている。

 一方で、この報告書の真骨頂は、非軍事の注目すべき分野、例えば米国の政界・メディア・ビジネス・アカデミアに影響を与え中国の意図を実現しようと影響作戦(Influence Operation)に対する懸念が記述されている点だ。

 これらの軍事的脅威と非軍事的脅威は、米国のみならず日本にとっても切実な脅威であることを気づかせてくれるのがこの報告書である。

 それでは、以下に「2019中国軍事力報告書」の主要点に絞って説明したい。