オープンイノベーションの実現にはどのような組織が適しているのだろうか?

(古野 庸一:リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所 所長)

イノベーション環境の激変

 ムーアの法則に代表されるように、デジタル技術は指数関数的に進展している。2014年に発売されたiPhone6の計算の性能*1は、1976年に約10億円もしたスパコンの性能*2-3の700倍になっている。1838年に最初の写真が撮影されてから人類は2017年までに約9兆枚の写真を撮影してきたが、2015年から2017年の3年間だけで、その4割近くが撮影されている*4-5

 製品化されてから5000万ユーザーの獲得までに、ラジオであれば38年、テレビであれば13年かかっていたが、フェイスブックであれば1年、ポケモンGOであれば19日で達成している*6

 そして、技術の発展は、次々と産業を破壊していく。日本のCD生産枚数は、1997年には5億枚に届きそうであったが、今では4分の1程度になっている*7。日本の書店数は、2000年に2万店舗ほどあったものが今では半分になっている*8

 一方で、技術の発展の恩恵に受けている産業もある。世界のシェアリングエコノミーは、2013年に150億ドル程度であったが、2025年には3350億ドルまで増えると予測されている*9。また、世界のIoTデバイス数は、2013年に100億個だったものが、2020年には300億個を超える予測になっている*10

(図表1)世界時価総額ランキング
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 世界時価総額ランキングを見てみると、1989(平成元)年のベスト5は、すべて日本の企業であったが、2018(平成30)年は、すべて米国のIT企業になっており、時価総額そのものも一桁違うものになっている(図表1)。企業を取り巻く環境は激変している。

 急速な技術の発展とともに激変する事業環境に対応するために、自社の技術開発に依存していては後塵を拝することになるのは、目に見えている。結果、自社以外の技術を取り入れるために、各社は社外との提携を活発化させている。

 また、各社がビジネスを考える際に、社会課題の解決を意識していることがオープンイノベーションの流行の一因になっている。社会課題は、高齢化、地方創生、所得格差、貧困、健康など、扱っている範囲が広く、自社のビジネスや技術だけで解決できないことが多いので、政府や大学や他社との連携が必要であり、オープンイノベーションを加速させている要因になっている。