現場視点でのオープンイノベーション実態調査

 急速に広がっているオープンイノベーションであるが、実際に新規事業開発に業務として携わっている人がイノベーションに向けた活動をどのように捉えているのか実態の調査を行ったので、その結果を共有したい*11

 本調査は、オープンイノベーションを成功させるための阻害要因や促進要因について、人・組織のマネジメントの側面から理解することが重要だと考え、推進状況に加え、“社外連携を順調に推進している群”と“そうでない群”に分けて分析したものである。

 そもそもイノベーションは、企業業績を牽引しているのかという疑問があったので、イノベーションの創出数と営業利益成長率の関係を調査したのだが、両者は相関していることが分かった。業界水準より高い営業利益成長率を維持できている企業のうち、71.3%の企業が業界水準を超えるイノベーションを生み出してきたと回答している。

 さて、新規開発の現場で、イノベーションプロセスのオープン化(外部の組織と連携し、その経営資源を活用すること)はどの程度推進され、どのような効果や難しさを生み出しているのだろうか。

 担当する新規開発業務においてオープン化が推進されているとの回答は64%。オープンイノベーションを推進する/しない理由を聞いてみた。

 オープン化を推進している推進群では、オープン化は、「結果を出すスピードを速める」「新しい技術を取り入れる」「用途や市場の開拓」「技術的課題の解決などの役に立つ」と考えている。

 一方で、非推進群がオープン化を推進しない理由としては、「自社の知識・技術の流出懸念」が強いようだ。

 オープン化推進群の約半数、56.4%が、社外連携は総じて順調(11.9%)/どちらかといえば順調(44.5%)と回答している。オープン化を成功させる鍵は何だろうか。

 順調群では、外部の知識・技術や連携先の探索活動が全体的に活発である。「探索は行っていない」との回答はわずか3.0%であり、非順調群の17.5%とは大きな開きがある。また、自社のニーズや課題、自社が開発した技術を公開するリスクを積極的に取っている。日本企業が従来強みとしてきた系列企業を通じた探索などに加え、よりリスクを取った新たな連携先開拓が、順調な社外連携につながっている可能性が伺える。