台湾・台北の街並み

(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)

 台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)の郭台銘CEOが4月17日、台湾総統選への出馬を決めた。平成最後のこの大ニュースに、筆者は腰を抜かすほど驚いた。

 ホンハイは、100万人を超える従業員を擁する中国の巨大工場群で、世界のPC、スマホ、各種デジタル機器の委託製造(EMS)を行っている。これら電子機器の約9割を組立てていることにより、「世界の工場」と呼ばれている。ホンハイは、郭氏が1974年に創業し、1代で売上高19兆円の巨大企業に成長させた。郭CEOは、100万人超の頂点に君臨する独裁者として知られている。

 台湾総裁選で郭氏は、中国との融和を掲げる国民党の予備選を経て、2020年1月に総統選に望むことになる。台湾で行われた世論調査では、中国からの独立を目指している民進党現総統の蔡英文氏との一騎打ちになった場合、郭氏が50.2%、蔡氏が27.1%と、郭氏が断然優勢の結果となったという(日本経済新聞、4月19日)。

 しかし、もし郭氏が台湾総統に就任した場合、激化している米中ハイテク戦争に大きな影響が出るだろう。米国が「国防権限法」により世界中から排除しようとしている中国ファーウェイが台風1号とすれば、台湾総統になった郭政権は、もっと強力で大きな台風2号となる可能性が高い。

 本稿では、まず、米中ハイテク戦争と、台風1号および2号の複雑な関係を整理する。その上で、本当に台風2号が発生した場合、つまり、台湾に親中国の郭政権が誕生した場合、米中台にどのような影響が出るかを考察する。正確な予測は困難だが、その“被害”は甚大であるように思われる。

鴻海の郭会長、家出した妻めぐり「後宮は政治に首を突っ込むな」と発言

鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘会長。台湾・新北市で(2017年6月22日撮影、資料写真)。(c)SAM YEH / AFP〔AFPBB News

米中ハイテク戦争と台風1号&2号の関係

 非常に複雑な米中ハイテク戦争と台風1号および2号(現在はまだ熱帯低気圧)の関係を、図1を用いて、(1)から(8)の順に説明する。

図1 米中ハイテク戦争と台風1号&2号