そう考えると、先の「最低限必要な生活費22万円」「ゆとりある暮らしなら35万円」という金額をどうとらえればよいのでしょうか。

 最初に考えたのは「生命保険文化センターの金額はあくまで意識調査であって、実態とかけ離れているのではないか」ということ。そこで、実態に近そうな別の調査を調べてみました。見つかったのは総務省統計局がまとめた「家計調査年報(家計収支編)平成29年(2017年)」(https://www.stat.go.jp/data/kakei/2017np/gaikyo/)です。

 それによると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の平均実収入は20万9198円(うち公的年金などの社会保障給付19万1880円)、消費支出は23万5477円となっています。消費支出は前述の22万円(生命保険文化センターによる最低限必要な生活費)と近く、そうかけ離れた調査結果とはいえなさそうです。

平均の数字や他人との比較だけでは答えは出ない

 では、支出の内訳はどうなのでしょうか。「家計調査年報」では多い順に、食料(6万4444円)、その他の消費支出(5万4028円)、交通・通信(2万7576円)、教養娯楽(2万5077円)、光熱・水道(1万9267円)と続いています。さらに、税金や社会保険料などの非消費支出(2万8240円)が加算されることになります。

 その他の消費支出(5万4028円)には交際費(2万7388円)が含まれており、食料関連と遊興・交際費用関連で10万円以上。消費支出の4割を超えます。収支改善を考えるなら、このあたりがターゲットになりそうです。これは老後生活のみならず、われわれ現役世代でも同じことが言えるのではないでしょうか。

 もし仮に食費と遊興・交際費で支出をコントロールするなら、住んでいる地域(都市部か郊外か)や趣味・趣向といったライフスタイルによって、大きく変わってくる可能性があります。

 前述の2つの調査では、ほとんどが持ち家という前提です。持ち家なのか賃貸なのかで住居費の割合は大きく変わるでしょう。ほかにも、自分の年齢と子どもの年齢はどうか、その子どもが同居しているのか、どのくらい収入があるのか。孫・子への経済的サポートをどう考えているのか、友人・趣味は多いのか、グルメや旅行への興味がどのくらいあるのか、などなど――。