開発したセキュリティ技術を説明する三菱電機情報技術総合研究所の米田健情報セキュリティ技術部長

 三菱電機は2019年2月、センサーへの攻撃を高い精度で検知するセキュリティ技術「センサー攻撃検知アルゴリズム」を開発した。無人飛行機(ドローン)、自動運転車両、自律走行型ロボット、生産設備など、センサーデータに基づく自動制御機能を搭載した機器を攻撃から守る。

 通信販売で受注した商品をドローンに載せて顧客の元に配送する――。そんな実証実験が国内外で行われている。宅配ドローンが実用化されれば、人手不足が深刻化する物流業界に省力化の効果をもたらすと脚光を浴びる一方で、飛行中のドローンが攻撃を受けて墜落する、あるいは乗っ取られるといったセキュリティ面の懸念も浮上している。

 ドローンに限らず自動制御で走行する機器には、自らの姿勢を把握するため「センサーフュージョンアルゴリズム」と呼ぶ技術が広く使われるようになるとみられている。センサーフュージョンアルゴリズムは、複数のセンサーから得たデータを組み合わせて補正することで、機器の姿勢を示す「傾き」をより正確に計測できる。複数のセンサーのデータを用いるので、センサーフュージョンアルゴリズムは自動制御に支障をきたすような攻撃の影響を受けにくいと考えられてきた。

 ところが、特定の周波数の超音波を用いると、センサーフュージョンアルゴリズムを誤作動させられることが分かった。IoT(モノのインターネット化)関連技術や情報セキュリティ技術の研究を手掛ける三菱電機の情報技術総合研究所が、センサーフュージョンアルゴリズムの処理内容に着目して攻撃のリスクを発見。2018年にセキュリティの国際会議で発表し、国内外の研究者の注目を集めた。

超音波を当てて測定値を狂わせる

 センサーフュージョンアルゴリズムを誤作動させることができると、ハッカーがドローンや自動運転車両を自在に操れるようになるおそれがある。例えば、「(誤作動させる能力を持った)ハイジャックドローンが宅配ドローンに近づき超音波を出して制御を乗っ取り、商品を横取りしてしまうといった可能性がある」と三菱電機情報技術総合研究所の米田健情報セキュリティ技術部長は説明する。