物質循環に大きな役割を果たすユーグレナ

 実際にどのような研究開発がこれまで行われ、そして今後の課題は何か。スペースフードXに参画するユーグレナ執行役員研究開発担当の鈴木健吾氏に話を聞いた。

ユーグレナ執行役員研究開発担当の鈴木健吾(すずき・けんご)氏。

 ユーグレナはワカメや昆布、クロレラと同じ藻類の一種で、動物と植物の両方の特徴を持ち、ビタミン、ミネラル、アミノ酸など59種の栄養素を含むという。さらに放射線に対する耐性が強い。鈴木氏は「ミドリムシは、人間が呼吸で出す二酸化炭素や、尿や排せつ物に含まれる窒素を吸収して育つことができ、しかもそれらを酸素や栄養素に変換するので、人間の生活を維持するパートナーとして活用できるのではないか」と、その可能性の大きさを説く。

 鈴木氏の研究によると、月面の作業員1人あたり400リットル(ドラム缶2本分)のミドリムシ培養液があれば、二酸化炭素を吸収しつつ必要な栄養を採れるという。宇宙での藻類培養を想定したカルチャーバッグで培養技術を開発してきたほか、鈴木氏の研究で注目に値するのは、培養したミドリムシから「ミドリムシ100%ハンバーグ」を作り、試食していること! だが「見た目や味に改善点があり、いくらミドリムシ好きの私でも365日は食べられない(笑)」(鈴木氏)。

 見た目や味の課題に直面していた鈴木氏は、スペースフードXでミドリムシを他の食材と一緒に調理することで、おいしく栄養価も高く食べられることが分かり、出口が見え始めた。「ベンチャー一社だけの視点ではなく、専門の大手食品会社に味付けをみてもらえる。栄養素についても、他社の食材とインテグレートすることで補いあってひとつの商品にしていける」とプロジェクトへの期待を語る。

 宇宙空間や月面で藻類を培養する際の課題については「培養液が飛んでいってしまわないようにすること。とろみをつけるのが解決策のひとつ。あとはなるべく軽く、現地で調達できる素材で培養できる仕組みを考えないといけない。佐賀市の下水処理場で、下水からミドリムシが育つことは実証済みで、その技術は活用できそうです」。