根室市役所で戸籍事務に携わる職員は7人。限られた職員が疑義照会作業にかかりきりになれば、通常業務に支障が生じる。そこで、IBMでは、戸籍パッケージの開発に携わり戸籍実務に精通した担当者を東京から根室市に派遣し、市の職員が直接関与する必要のない作業についてはIBM側の要員が代行して作業を進めることで、通常業務への影響を最低限に抑えた。

根室市市民環境課 長谷部裕美子主査

 戸籍事務に携わる長谷部裕美子主査は、根室市よりも一足早く戸籍電算化に踏み切った近隣自治体の担当者との情報交換する中で、苦難の日々を覚悟していたという。「ある自治体の担当者からは、一年近くに渡って毎日のように残業が続き、移行直前は寝ずの作業だったという苦労話を聞かされていた。根室も来月から忙しくなるのかな、来週から苦労するのかな、いつから忙しくなるんだろう…と思っているうちに戸籍情報システム稼働式の当日を迎えてしまった」と微笑む。

 サポート体制が万全なことも、担当者にとっては心強かったという。運用開始直前の1カ月間はダミーデータを使って戸籍事務を練習する環境が提供された。長谷部主査は「トレーニング期間が長期に確保されていたので、業務の合間に何度も何度も練習することができ、端末の操作にはすっかり慣れた」という。それでも、運用開始当初は不安になるものだが、運用開始2週間はIBMの担当者が常駐し、端末操作の支援や、万が一のトラブル対応に備える。「不慣れな作業を後ろで見守ってくれている人がいるというだけで、大きな安心材料になった」そうだ。

 さらに、IBMでは平日の午前8時30分から午後6時までフリーダイヤルの「戸籍サポートセンター」を開設。システムを納入している自治体からの問い合わせや、万が一ハードウェアのトラブルが発生した際に、迅速に対応できる体制を整えている。

1台のサーバーで北方領土6村の戸籍データベースも管理

根室市で保管している北方領土分の戸籍台帳

 もう一つ、根室市には特殊な事情がある。1983年4月から総務大臣・法務大臣の指名により、北方領土6村の戸籍を根室市長が管理しているのだ。北方領土返還を求める運動の一環として、東京や横浜など遠く離れた土地に住む人が戸籍を北方6村に移す例が年に数件あり、それに伴う事務も発生する。

 IBMは1台のサーバーで根室市と北方領土6村の計7つの戸籍システムのデータベースを一括管理できるシステムを提案、資源を有効活用しながら、低コストで効率的な管理ができるような体制を整えた。竹脇課長は「市の事情を理解した上での提案は有り難かった」という。

 竹脇課長は「IBMの提案は予算規模が小さい自治体の事情をよく理解し、低コストで万全のサポート体制を敷いてくれている。今後、道内で戸籍電算化を検討する自治体があれば、自信を持って奨めたい」と太鼓判を押している。