中村:でも、そうならないよう、中からの働きかけで防げる部分はあるはずで、実際、鹿島はそれができる。特に(小笠原)満男みたいな選手がずっといれば、「それ、違うんじゃない?」ということを、まずグラウンドで直していけて、それを上(クラブ)が感じてクラブを直していく。ジーコさんなのか、強化部の人たちの影響なのか・・・わからないですけど、いずれにしても鹿島の血は「濃い」んだなっていうのはわかりますよね。他のクラブとは違うな、と思います。俺、鹿島の映像を結構、観てるんですよ。

岩政:試合ですか?

中村:練習、練習! 興味あるから。映像で見てさ、内容とかその雰囲気とか観てて。

岩政:へぇ! どうですか、印象。

中村:選手の意識が高い。例えば、攻撃に出ていたダブルボランチが、相手のペナルティエリアから戻ってきてスライディングでクリアをした、そしたらまた前に出て、もう1回攻撃に行く。こういう練習は、なかなかプロになったらなくて。「え、スライディングでクリア?」みたいに感じるんだけど、選手たちがよく理解しているから、スライディングするタイミング――例えば、ショートバウンドとか、足の向きまで考えられてる。普通だったらストッパーがやるんだけど、それをボランチがやっているのを見ると、ああもう・・・って。それをまた若い子が見るでしょう。それは戦うチームになっていく。

――確かに。

中村:ちょっとの映像だけでも感じるよね、笑顔とか一切ないし。

岩政:僕は他のチームのことはあまりよくわからないですけど、いま、色々なチームの練習を観させてもらっていて、鹿島が持つ雰囲気には他クラブと多少、違いがあるのは感じますね。

中村:笑顔はあってもいいんだよ。結局は戦えるチームであるかどうかでさ。

岩政:俊(俊輔)さんが入ったばかりの頃のマリノスの先輩たちはすごかったんじゃないですか。

中村:ピリピリしてたよね。上の選手が下の選手に声をかけるなんてことはないし。当時はサテライトがあったんだけど、俺いきなり上の20人ぐらいの枠に入って・・・井原(正巳)さんがいて、オム(小村徳男)さんがいて、城(彰二)さんがいて、バシバシ喧嘩してるしさ。やばい、と思った。(川口)能活さんもまだピリピリしてたし。

岩政:はははは。

中村:「簡単に打たせんなよ!」って言えば、「今の捕れるだろ!」みたいな(笑)。そんなのが当たり前だった。そういうのはね、鹿島なんかもずっとあるんだと思いますよ。

――岩政さん、どうですか。

岩政:僕が鹿島に入ったのは、ちょうど秋田(豊)さんと入れ替わりだったんですけど、練習参加のときにはまだいらっしゃったんですね。そこで練習試合になって、秋田さんと相馬(直樹)さんに挟まれて左のセンターバックをやらされたんですけど、喧嘩が始まっているわけですよ。僕を真ん中にして(笑)。前に本田(泰人)さんがいたのかな・・・ボランチの人もそこに参戦して、もうとにかく、僕を挟んだところでバチバチ喧嘩をしていて。それを目の当たりにするところからのスタートでしたから、少なからずそういう意識はありました。特に、晩年になるにつれて強くなりましたよね。

――徐々に強くなっていった。

岩政:満男さんたちと一緒に歳を取りながら、彼らと一緒にそれをやって、それを見た若手が同じように受け継いでいって・・・、クラブの雰囲気とかって「あのひと言でチームが変わった」みたいな美談にされがちですけど、どちらかというと日常の中でどういう振る舞いをしているかとか、練習への姿勢をどう持っていっているか、みたいな部分のほうが、選手たちが受け継いでいくんじゃないかなっていう気はしますよね。

セットプレーの「パッケージ」理論

――では、岩政さんから見た俊輔さんの印象っていうのは?

岩政大樹。1982年1月30日生まれ。山口県出身。日本代表として南アW杯ベスト16、2011アジアカップ優勝を経験。鹿島アントラーズではリーグ3連覇をけん引。新刊に『FOOTBALL INTELLIGENCE』。メルマガとLIVE配信を組みあわせた『PITCH LEVELラボ』も行っている。