かつては「夢と希望の地」であった団地が、いまや都会の限界集落と化している。高齢者と外国人労働者が居住者の大半を占め、世代間の軋轢、都市のスラム化、外国人居住者との共存共栄と、課題は山積み。日本の近未来の問題が凝縮された団地という空間を、長年これらの問題に取り組んできたルポライター・安田浩一氏が2回に分けて紹介する。前回は、埼玉県のとある団地の取り組みを紹介した。今回は、各地の団地事情に触れながら団地の「これから」を考察する。(JBpress)

(※)本稿は『団地と移民』(安田浩一著、角川書店)の一部を抜粋・再編集したものです。

団地住民の高齢化と外国籍問題

(前回)埼玉の団地、「中国人のせいで治安悪化」は本当か?
http://jbpress.ismedia.jp/-/articles/56017

 団地の高齢化が止まらない。同時に建物の老朽化も進んでいる。取り壊しが決定した団地も全国各地に点在している。そんな団地から姿を消した若者たちの穴を埋めるように、急増しているのが外国人住民だ。

 前回触れた埼玉県の「芝園団地」のように、団地の“国際化”が各地で進行している。よく知られているのは、神奈川県の横浜市と大和市の間に広がる県営の「いちょう団地」だろう。近くにインドシナ難民の定住促進センターもあったことから、すでに30年以上も前から同団地ではインドシナ系住民が増え続けていた。

 さらには近くの工場で働く外国人なども流入し、いまでは住民の半数以上、約20か国の国籍を持つ人々が暮らしている。ネット上では「ディープな場所」として取り上げられることが多いが、実際に足を運んでみれば「ディープ」でも何でもない。当たり前の生活の場がそこにあるだけだ。

 私は、毎年秋におこなわれる「いちょう団地」の団地祭りを楽しみにしている。ベトナム料理をはじめとするエスニック料理の屋台が並び、各国の伝統芸能が披露される。豊かな“国際色”こそが、この団地の持ち味だ。