アルコールとカフェイン、代謝のされ方の違いに注意

栗原久氏(くりばら・ひさし)氏。元東京福祉大学教授。医学博士。群馬大学大学院工学研究科応用化学専攻修士課程修了後、同大学医学部にて助手(行動医学研究施設行動分析学部門)。途中、米国ニュージャージー州立ラトガース大学心理学教室、またテキサス大学ヘルスサイエンスセンター・サンアントニオ校薬理学教室への留学を経て、1997年、群馬大学医学部助教授。2006年より東京福祉大学教授。2018年に定年退職。カフェイン研究は、1980年代に起きた咳止め薬「ブロン」乱用問題を機に本格化。著書に『カフェインの科学 コーヒー、茶、チョコレートの薬理作用』(学会出版センター刊)など。出身・在住地である群馬県への愛が深く、NPO赤城自然塾による「赤城山検定」策定などにも従事。

――お酒を飲んだとき、コーヒーなどで酔いを覚まそうとする人もいます。アルコールとカフェインの関係性をどう見たらよいでしょうか。

栗原 この組み合わせについて考えるのは重要です。実際の組み合わせ方として、「同時摂取」「アルコール摂取から少し間を置いてカフェイン摂取」「アルコール摂取の翌朝にカフェイン摂取」の3つで考えてみます。

 まず、同時摂取の場合、アルコールは脳の働きを下げ、カフェインは逆に脳の働きを高めるので、これらの作用を打ち消し合います。

 アルコールとカフェインの作用は、ともに摂取30分後にピークとなりますが、考えるべき問題はその後のことです。

――と言いますと・・・。

栗原 アルコールとカフェインでは代謝の仕方が違うのです。カフェインの摂取量は「ミリグラム」単位であるのに対し、アルコールの摂取量は「グラム」単位。アルコールのほうがなかなか分解されません。500mLの缶ビール1本でも3時間は体内に残ります。2本だと6時間、3本だと9時間と、アルコールの血中濃度が高い状態が続きます。だから、前夜に飲酒すると、翌日のアルコールチェックで引っかかるのですね。

 一方、カフェインの血中濃度は「3~4時間後にはピークの半分まで減る」と言いました。ですので、同時に飲み始めて、「今日は酔いにくいみたいだ」などとアルコールをどんどん摂取してしまうと飲み過ぎになり、その後アルコールの作用が強く出て危険になるわけです。急性アルコール中毒のリスクがあるのですね。