(野崎大輔:組織人材開発コンサルタント)

 いよいよ「働き方改革」の時代に入ってきました。あなたの会社でも、就業規則を変えられたり、社内に新しい制度が取り入れられたりしたでしょうか。

 しかしこうした取り組みだけでは、残念ですが、あまり意味がありません。もっと本質的なところから変わらなければ、企業の「働き方」は変わらないのです。

「優秀な人材」が採れないなら「普通の人材」を育成せよ

 時代はますますVUCA化(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)が進み、AIが普及し、そして労働人口が減少する。こういう中で生き残れる中小企業はどういう会社なのでしょうか。

 技術力や営業力ばかりではなく、きちんと社員を育成して、自分たちで自分たちの会社を良くするという「自浄能力」のある会社が生き延びる会社なのだと私は考えています。

「社員の育成」という点においては、中小企業は大企業よりも真剣に考えないといけないと思います。「働きアリの法則」について聞いたことがある人が多いと思います。「2:6:2」の法則ともいわれますが、働きアリの集団を観察すると、2割が非常によく働き、6割が普通、2割は働かないと言われ、同じことが人間にも当てはまるというアレです。

 これを採用時の経営者の心境に重ねてみてみると、ほとんどの会社では「優秀な2割」とか「普通の6割」のうちの優秀な層に来てほしいと思っています。でも、批判を恐れずに言えば、中小企業ではまず難しい。面接に来るのはせいぜい普通の人たち、中の下くらいの人材です。だからこそ中小企業では、そういう人を育て、なるべく「優秀な2割」に近いレベルに引き上げ、かつ集団の中から「働かない2割」が生まれないよう育成していかなければならないのです。

 社員が育つ仕組みがない中小企業はこれから滅びます。なぜなら、育成の仕組みがない会社は、社員のレベルアップが望めず、生産性も低い状態で人材不足ですから社員が疲弊し離職率が高くなるという悪いスパイラルに陥っていくからです。その穴を補うべく社員募集をかけても誰も面接にこなかったり、来たとしても下位2割の人だったりします。それでも人手不足解消のためには採用せざるを得ません。しかし、採用した社員をしっかり育成できなかったら、生産性は高まりませんし、また離職・採用の繰り返しに労力を割かれることになります。そんな企業が生き残れるわけがありません。