メルペイが目指す「信用」が支える経済圏とは?

 2019年2月13日、フリマアプリ「メルカリ」を手掛けるメルカリの金融子会社であるメルペイが、スマホ決済サービス「メルペイ」の提供を開始した。

 昨今「LINE Pay」や「PayPay」等、「〇〇Pay」という名のスマホ決済サービスが乱立しているが、メルペイの目的は単なる決済手段の提供に留まらない。真の目的は、そこから個人の「信用」によって支えられる新たな経済圏を構築することにあるといわれている。

 これを聞いて、中国で浸透しつつある「信用スコア」の仕組みを思い浮かべる方も多いのではないだろうか。点数化された個人の信用力が支える経済とは、どういったものなのだろうか。アリババグループのアント・フィナンシャルサービスグループが展開する「芝麻信用(じーましんよう)」を参考に、メルペイが思い描く日本の未来図を探っていこう。

メルペイについて

 2017年11月、メルカリの子会社として設立されたメルペイ。同社は月間利用者数が1000万人を超えるというフリマアプリ「メルカリ」で培った技術力を背景に、「信用を創造して、なめらかな社会を創る」ことをミッションに掲げていることからも、単なるキャッシュレスサービスを展開しようとしているわけでないことが窺える。

 2月13日よりサービスを開始した「メルペイ」は、「メルカリ」での取引で得た売上金やポイントの利用先を一気に拡大し、利便性を向上させた。ユーザーは売上金やポイントを現金化する手間や時間をかけることなく、スマホ一つで実店舗で使用できるようになったのだ。

 事前に利用設定やポイント購入の操作を行う必要はあるが、手数料や売上金受取の申請期限の存在に不満を抱いていたユーザーにとって、より手軽に売上金やポイントを活用できる「メルペイ」の登場は吉報となっただろう。最近流行りのQRコード決済ではなく、三井住友カードとの事業提携により、日本人にとってなじみ深い非接触決済サービス「iD」に対応している点も特徴的だ。これにより「メルカリ」内での取引はもちろん、コンビニや飲食店、ドラッグストア等、全国約90万カ所の店舗で利用可能にした。この「メルペイ」は「メルカリ」アプリ内の機能として提供されている。

 これだけ聞くと、あくまでメルカリユーザーを対象とした一施策のようにも思える。しかし、メルペイは2月20日に報道関係者やパートナー向けにカンファレンスを行い、今後の戦略や展望を発表している。

 それによれば、「メルペイ」は3月中旬(予定)から、先に挙げたコード決済にも対応していくという。これにより、「iD」に対応した決済端末機を保有していない小規模店舗を加えた全国135万カ所で「メルペイ」の利用が可能になる。また、同サービスは全国60行以上の銀行との口座連携を予定しているという。

 このように対応店舗や銀行も増えていくことから、現状はあまりメリットはないかもしれないが、「メルカリ」をフリマアプリとして利用していなくとも、決済アプリとして「メルペイ」機能のみを使うこともできるというわけだ。

 さらに、「メルペイ」は今後ECサイト、実店舗双方での決済に対応していく予定だ。将来的には「メルペイ」のネット決済を使って商品を購入し、その購入履歴を元に、ワンタップで「メルカリ」へ出品できる世界を目指す。

 発表によれば、現在「メルカリ」の月間利用者数は1200万人、平均月間利用時間は5.3時間。同アプリ上での取引で発生する売上金は年間約5000億円にも上るという。同社はこの売上金を原資に新たな消費需要を喚起できるとして、「メルペイ」導入加盟店を募っている。

 加えて神奈川県や仙台市(宮城県)等、8つの地方自治体との連携が発表された。詳細は発表されていないが、多くのユーザーを抱える「メルカリ」が保有するデータを使い、地域活性化に向けた取り組みを進めていくのではないだろうか。