予定より30分以上早いタッチダウン

 2月22日朝6時過ぎ、高度500m地点の最終判断で「GO」が出た。これ以降、はやぶさ2は自律モードで着陸点を目指す。前回の記事で詳述した通り、着陸までには4つの関門があり、少しでも想定と違えばアボート(緊急離脱)するように探査機に教え込んでいた。安全性を何より重視したからだ。

 チームは見守るしかない。しかも、探査機から送られてくるのは速度情報のみ。限られた情報からメンバーは、はやぶさ2の移動やわずかな姿勢変化を読み取り、動きを頭に浮かべる。津田プロマネの頭の中にはずっと心配が巡っていたという。「自分たちが設計し、仕込んだものに対する自信はあるが、技術者の性として疑いも持ち続ける。信号を見ながら『こういうことが起きるはずだが大丈夫か』と、最後の最後まで不安が尽きなかった」。

 その心配をよそに、探査機は安定した動きで、最短で4つのポイントをクリア。予定より約40分早い7時29分、探査機が降下から上昇に転じたことがデータから読み取れた。管制室では大きな拍手と歓声が沸き起こった。

探査機が上昇したことを確認、抱き合う津田プロマネと佐伯孝尚プロジェクトエンジニア(提供:ISAS/JAXA)

 8時過ぎから探査機から詳細なデータが届き始めた。探査機の状態が正常であること、着陸、弾丸発射コマンド送信などすべての作業が予定通り実行されたことを確認し、8時42分、JAXAは小惑星リュウグウへのタッチダウン成功を宣言した。

14年ぶりのリベンジ、弾丸は発射された!

 嬉しい続報は続く。探査機から届く画像データを公開できるのは、着陸の翌日以降とされていたのに、22日11時からの記者会見中に、着陸直後の画像が公開されたのだ。

タッチダウン約1分後、高度約25mから撮影された画像。右図の紫色のエリアはタッチダウン予定地点。矢印の先の白い点がターゲットマーカー(提供:JAXA、東京大など)
拡大画像表示

 はやぶさ2探査機(影)の斜め下に見える、濃いグレーのエリアに注目してほしい。着陸前の画像には見られなかった変化で、探査機のタッチダウンによって砂が舞い上がった可能性が大きいとみられる。また、右図の着陸予定地点とグレーエリアがほぼ重なっていることから、目標通りに着陸したことが分かる。