初代はやぶさと合わせて、小惑星に2度着陸成功したのは日本だけ。つまり小惑星探査は日本の独壇場である。この快挙はもっと評価されていいと思うのに、「初号機とどう違うの?」「何がすごいの?」と聞かれることもしばしば。

 そこで、はやぶさ2の何がすごくて、どうやって成功したのか、これからどんな世界が広がるのかを紹介したい。

5時間遅れのスタート

 まずは何が起こったかを整理しよう。リュウグウへの着陸作業は2月21日、不安な幕開けから始まった。朝7時半ごろ、高度20kmから降下を開始する予定がトラブル発生。プログラムを動作させたところ、位置情報が想定と違っていたのだ。

 ここでチームが本領を発揮した。探査機を熟知するメンバーは、トラブルの原因がプログラムの動作タイミングの影響であることを即座に突き止める。プログラムを書き換え、確認、探査機に送信などの作業を実施、5時間遅れの同日13時13分に降下を開始。スタートの遅れを挽回すべく、探査機の降下速度を毎秒40cmから毎秒90cmに上げた。

 プログラムを書き換え、送り直すとは大変な作業に思える。実際、動揺したメンバーもいたという。だが、津田プロマネは冷静に「時間は十分にある。落ち着いて」と声をかけた。その根拠は、約50回重ねた事前の運用訓練にあった。5時間遅れで初期設定をし直す訓練、降下速度を毎秒100cmに早めて着陸させる訓練を、チームは既に体験していた。「あの時のやり方だ、と皆で共有できたのです」(津田プロマネ)。

問題が起こると対等に議論を戦わせる管制チーム。22日朝6時ごろ。(提供:ISAS/JAXA)

 冷静で迅速な作業の結果、21日19時過ぎには高度5km地点に到達。遅れを挽回し、当初予定通りのタッチダウン作業が行われることになった。