(3)は独立系運用会社に顕著な特徴といえます。運用している投信が複数あって投資対象などが違っていても、根本の投資哲学は共通だったりします。投資哲学で商品を選びたい人にはうれしいポイントといえるでしょう。

資産規模が小さく継続性に不安がある

 一方、デメリットとして挙げられるのは以下の3つです。(1)運用会社ごとに口座開設が必要になる、(2)一部を除いて資産残高が少ない投信があり、投資継続性に不安を感じることもある、(3)商品の数や種類が少ない。

(1)は直販である以上、面倒ですが仕方ありません。(2)に関しては、実際に資産残高が少なくて運用会社3社が合併したことがあります(投信そのものは現在も運用を継続しています)。

 ちなみに、投信の運用会社が万が一破綻しても、投資した資金は額にかかわらず制度的に守られるようになっています。資金(信託財産)は運用会社とは別の信託銀行に保管されているので、直接的な影響はありません。運用していた投資信託は他の運用会社に引き継がれるか、繰上償還されることになります。

(3)は商品選びの選択肢が限られるということです。今後の拡大に期待するしかありません。

効果は運用実績だけではない

 こうして見ると、投信の直販は投資についてある程度勉強した、自分なりの選択眼をもった人に向いたサービスのようです。

 実際の運用実績はどうなっているのでしょう。金融庁が2019年1月に公表した「販売会社における比較可能な共通KPIの傾向分析」によると、運用損益がプラスになっている顧客の割合が最も高い販売会社はコモンズ投信で、98%が運用益を出しています。以下、レオス・キャピタルワークス91%、セゾン投信85%と上位3位を直販メインの運用会社が占めています。

 このデータは2018年3月末時点のものなので、それ以後の運用実績で違いが出ているでしょうし、このデータだけで「直販だから運用実績が良い」とは判断できません。しかしながら、同分析では「上位3社にその要因をヒアリングしたところ、共通して積立投資の効果を強調している」と報告しています。

 独立系運用会社が中心となって地道に進めてきた投信直販ですが、その効果は運用実績だけでなく、投資家教育に及ぼす影響が大きかったといえそうです。今後は大手金融機関系運用会社の本格参入によって、直販投信の数や種類も増えていくでしょう。「長期・分散・低コスト」に加えて、運用哲学をベースにその運用会社のファンになれるかどうか。この点で商品選びを行うのが一般的になる時代が来るかもしれません。

【訂正】記事初出時に、コモンズ投信の直販投信の開始が「2007年」とありましたが正しくは「2009年」でした。本文は修正済みです。(2019年2月28日)