ギリギリまで学んだ体験が必要

 では、学生側は今回の経験をどのように受け止めているのか。

 第1回で話を聞いたチームのうち、最終審査まで残った京都大学経済学部の同じゼミで学ぶ2年生の4人チームに、再び話を聞いてみた。

京都大学の2年生チーム

 「ロジックを積み上げてプランを作るところまではできますが、実際に製品を売ることを前提に考えた経験がなかったので、その点が難しかったです。でもそこが一番、勉強になりました。もっとマーケティングを勉強したいと思いました」(キムセヒョンさん)

 「プラン作成に当たってはP&Gジャパンのマーケッターの方から、わりとボコボコに言われましたが、それが刺激になりました(笑) 僕自身はいずれ日系の安定した企業に就職できればいいかなと思っていたんですが、今回のビジコンを通じてマーケティングも面白いなと思うようになりました」(山東丈将さん)

 こうしたコメントからも、たとえプランを実行に移すことはできなくても、たくさんの収穫があったことが伝わってくる。

 2か月ほど前に最終審査のオリエンテーションの際に話した時とは違い、4人の目つきが鋭く、言葉に熱と強さがこもっている。これから、ゼミでの勉強の熱の入り方も違ったものになるに違いない。

 「今回 、このプログラムに参加してくれた学生さんたちはきっと、1つのプランをまとめる上で様々な困難を経験したはずです。意見が割れたり衝突したりしたこともあったでしょう。それを乗り越えて形にするという経験こそが貴重だと考えています」

 松浦氏はこれをきっかけに、学生が大学で真剣に勉強するようになってほしいという。だが企業では学生が大学で学んだことを職場でどれだけ生かせると考えているのか。

 「専門的な知識やノウハウなら、入社後にいくらでも教えます。みなさんが気にする語学力も、まったくできないのでは厳しいですが、堪能でなくてもいい。そういうことは入社してから鍛えればいいことです」

 「私たちが期待するのは、ギリギリのところまで勉強したという経験です。4年間という短い時間の中で可能な限り文献にあたり、自分の決めた研究テーマを掘り下げ、論文にまとめるといったことを通じて、大学時代にしか経験できないことをたくさん積んできてもらいたいのです」