働くことを「自分ごと」にするための教育

 しかしP&Gジャパンが掲げる「グローバル人材の育成」については、すでに大学でもさまざまな教育プログラムを用意するなど、力を入れているところだ(詳しくは第2回の記事を参照)。

 そうした中でP&Gジャパンが企業として大学1、2年生の教育を行う目的とはどこにあるのか。

 「大学と弊社とではグローバル人材の考え方が違うと思うんです。私たちが言っているグローバル人材とは、どんな環境にあっても自分の頭で考えて行動し、状況を打開する力を持つビジネスリーダーのことなんです」

 つまり大学が目的とする多様な国の文化や価値観を理解するのが目的ではなく、ものごとに向かう姿勢やコミュニケーション能力、意志の強さといったビジネスにおける人間としての総合力だという。

 特に今回、P&Gジャパンが「グローバル人材の育成」を強調しているのは、日本のビジネスパーソンにそうした資質が欠けているからなのだろうか。

 「P&Gの内部でも、日本人社員は国内では能力を発揮するけれど、他国では発言が少ないという声が聞かれるのは確かです。日本以外の環境に身を置くと、自分で考えて行動し、リーダーシップを発揮するということが、他国の人に比べると弱い面はあると思います」

 日本人は優秀だということは共通認識としてあって、もっとできるはずだという期待を込めて、そのように指摘されるのだという。

 「こういう資質は大人になった後で鍛えようと思っても、なかなか難しい。今回私たちが試みたのは、一言でいえば学生さんが、会社で働くということを『自分ごと』にする機会を提供したかった、ということです」

 企業側の視点に立てば、たとえ学校の成績が優秀でも、豊富な海外体験を持っていても、それが働くことにつながっていないものなら、有望な人材ではない。確かにそこは大学では学びようがないところだ。

 今回のイベントで、P&Gジャパンが学生のプランに対して300万円という資金を提供し、実際に実行するところまでを含むプログラムにした意図が見えてきた。