この決定は、はやぶさ2チームの徹底的な議論と検討の結果だ。当初の着陸予定は2018年10月だった。しかし、リハーサルを繰り返し、「リュウグウの牙」の素性について、岩一つひとつの形状まで徹底的に調べあげ、詳細な地図などを作り上げるとともに、探査機自身の性能を機器一つひとつ、ソフトウエアのコーディングまでチェックして精密なチューニングを行った。

 数カ月の検討を重ねた末に、半径3mの目標地点にピンポイントで着陸する攻略法を見出したのだ。(ちなみに、はやぶさ2は太陽電池を広げると幅6mある。幅6mの探査機を幅6mに着陸させるなんて、車庫入れを想像し難しすぎると思いがちだが、探査機から突き出た試料採取装置が目標エリア内に着地すればよく、太陽電池はエリアからはみ出してもいい)

 狭いエリアに着陸できると判断したポイントのひとつは、着陸地近くに投下されたターゲットマーカーと呼ばれる「灯台」の存在だ。ターゲットマーカーは着陸目標地の中心から約4m離れているが、その位置関係を探査機に教え込み、プログラムを組んだ。

 小惑星探査機はやぶさ2は、2月21日13時15分、リュウグウの高度20kmから降下を開始した。タッチダウン予定は22日朝8時6分。ただし30分ぐらいは前後する可能性があるそうだ。タッチダウン予定地は赤道付近、ブラボークレーター西側の尾根だ。着地すると1秒以内に弾丸を発射、表面を砕いて浮き上がってきた砂を採取する計画だ。

リュウグウ表面の地名。赤い点が着陸目標地点。(提供:JAXA)
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 初めての着陸、しかも相手は3億km以上離れた場所にある、凸凹だらけの牙をむくリュウグウ。チームは、状況が分からない状態で無理に着陸するよりも、安全性を重視した。探査機には「何かあったら、すぐにアボート(緊急上昇)して帰ってきなさい」と教え込み、何カ所ものチェックポイントを設けている。チェックポイントをひとつでも満たさなければ次に進まず、即座にアボートする仕組みになっているのだ。

 具体的にどんなチェックポイントがあるのか。順番に見て行こう。