最も多い「職種を変えたい」という希望に関しては、「営業職がやりたい」「事務職がやりたい」「EC事業がやりたい」といった、さまざまな要望が聞かれるという。その対応として創設したのが、社内公募制度だ。ポストが空いたり増員したりする部署の情報を会社で共有し、従業員は人事へ直接応募ができるようになった。

 また、「管理職にはなりたくないが、給与が上がらないのが不満」という給与に関する不満の声に対して、販売専門職としてキャリアップを目指す「スペシャリストコース」を新設。基準を満たす従業員には、店長やマネージャーと同水準の給与を支給する。

 さらに、転勤への不安に対しては、「本人が選べる4都道府県」という地域限定の働き方を新たに導入した。4都道府県としたのは、必ずしも「隣接の都道府県」が、本人が働きたい地域ではないケースがあったからだ。そのためこの制度では、現在住んでいる岡山、実家がある東京都、将来住んでみたい沖縄や北海道、といった組み合わせも可能となる。

 こうしたユニークな制度は、従業員の「生の声」を聞いているからこそ、発案できるものと言えそうだ。

スピード感をもって導入される新たな人事制度

「退職者ヒアリング」の結果、30以上の制度を次々と導入したというはるやま。短期間にこれだけの人事制度を導入するのは、3000人規模の企業ではハードルが高いように思えるが、同社はどのようなプロセスを踏んでいるのだろうか。竹内氏は次のように話す。

「毎週1時間、私と社長は人事のことだけ話す時間を設けています。そのうえで、全役員と打ち合わせを実施、制度化はその場で即断即決、翌日には規定を改定し、その後に必要な手続きも速やかに行うというようなスピード感で実施しています」

 制度の改廃に関しても、従業員アンケートをもとに頻繁に行っているといい、同社の人事制度の柔軟性の高さがうかがえる。また、今回の取り組みは、退職者減だけでなく採用にも良い影響が出ており、さらには、従業員のキャリアアップ意欲の向上にもつながっているという。

 退職理由を見える化し、それを分析して社内施策につなげるという取り組みはシンプルであるとともに、従業員満足を向上させるうえで効果的なものと言えそうだ。また、組織に対する不満の声にも耳を傾けようとする会社の姿勢に、従業員の会社に対する「信頼」感が増すと思われる。こうした取り組みの実例は、従業員満足の向上に取り組む際に、参考になりそうだ。