それをカバーするためには、野球選手である前に、人として成長することが必須となる。

 そのために何かしてあげられることがあるとすれば、それを促すこと。人間的にもっともっと大人になっていけば、そういった感情のコントロールの仕方も変わっていくんじゃないのかと思っている。

 上沢にかけた大事な初戦は、残念ながらものにすることはできなかった。でも、それは先に一つ取られたというだけであり、それ以上でも、それ以下でもない。

 それよりも貴重な経験をした上沢が、そこで大きな財産を得てくれたとすれば、それは本当に良かったと思う。真のエースになるために、良いステップを踏んでくれたと信じている。(『稚心を去る』より再構成)