同法案は上程されるたびに下院司法委員会から移民・国境安全保障小委員会に送付され、審議されずに廃案になっている。

 ところが2018年11月31日、トランプ大統領がメディアとのインタビューで同条項を大統領権限で削除すると言い出したのだ。

 議会で可決成立しないのであれば大統領権限でやるというのだ。

 大統領自身、2016年の大統領選でも「出生ツアー」を厳しく非難し、憲法修正第14条の撤廃を主張していた。その意味ではキング議員はトランプ氏の意見を代弁していたことになる。

https://www.buzzfeednews.com/article/tasneemnashrulla/steve-king-racist-birthright-citizenship-trump-legislative

最高裁はこれまで修正第14条見直し案を却下してきたが

 トランプ大統領が大統領令でどのような具体策を打ち出すのか。ただ大統領令が出た場合もその是非は裁判所の判断に委ねられる。

 最終的には最高裁の判断となるが、これまで出された憲法修正第14条見直し訴訟はすべて最高裁によって却下されている。

 米主要紙の司法記者は筆者にこう指摘している。

 「今回米連邦検察局が『出生ツアー』の中国人業者たち起訴に持ち込んだ背景には、トランプ大統領自身の反移民、反中国という『哲学』があることは間違いない」

 「トランプ大統領としては、もともと白人以外の中南米やアジアからの移民には反対だ」

 「現行法では中国に住む妊婦が出産前に訪米し、米国の施設で出産し、生まれた子が市民権を取得すること自体は違法ではない」

 「今回、連邦検察局はその点では業者も妊婦たちも罰せない。だから(事実上の)『別件』で起訴したのだ」

 「ビザ申請に関する虚偽証言と詐欺、司法妨害、裁判所命令軽視、脱税、マネーロンダリング、為替法違反でしょっ引いたわけだ」

 「憲法修正第14条の見直しを大統領が命ずれば、そのインパクトは大きいはずだ。裁判所だって無下に却下するわけにはいかないだろう」

 「これだけ米世論が憲法修正第14条に反発しているわけだから議会民主党とて反対はできないだろう」

 今回の連邦検察局の動きはこの問題を巡るスタート台になるかもしれない。