資産形成の王道は株式投資ということになるが、今の日本の株式市場は、多くの国民が生涯にわたって個人資産を委ねられるほどの信頼性を持っているとは、お世辞にもいえない。このままの状況が続けば、資産形成について関心を持つ層は、米国など外国市場に資金を振り向ける結果となってしまうだろう。

 安心して資金を預け、長期的な資産形成に耐えられる市場にするためには、市場の再編や改革は必須といってよい。

 だが現実には、一連の改革を実現するのは、そうたやすいことではないだろう。最初に考えられるのは降格対象企業からの反発である。

 先ほども説明したように、日本では大企業になったご褒美として1部上場するという企業が多く、1部上場企業でなくなるということは、企業の「沽券」に関わる話となる。経営に自信がある企業なら何の問題もないはずだが、そうではないところは改革に反対する可能性が高い。

 証券業界の事情もある。証券会社や投資信託の運営会社は、TOPIXや日経平均株価に連動する多数の投資信託を取り扱っている。1部上場企業の数が大幅に減ってしまうと、指数連動型の投資信託に大きな影響が及ぶ。証券市場とは直接関係しない銀行にとっても、窓口における投資信託販売手数料は大きな収益源なので無関心ではいられない。

 東証では2018年11月から東証改革について議論する有識者会議を設置しており、年末には論点ペーパーを公表。一般からの意見の募集も行った(2019年1月31日が締め切り)。

 日本では証券市場の改革の必要性が叫ばれながら、現状維持が優先されてきた。今回、東証がこうした議論を提起したことは高く評価してよいだろう。日本の株式市場は、すでにアジアのローカルマーケットの1つとなりつつあるが、マーケットの原理原則に則って、適切な改革を実施すればまだ間に合うはずだ。今後の議論に期待したい。