企業が求める人材像が変わったことで、日本でも欧米型のジョブ型採用や通年採用、通年入社が次第に広がっていくのは時間の問題となっている。

 一握りの上位大学だけに採用が集中する傾向は、ますます強まっていく可能性が高い。

 それだけではない。学生に多数の選択肢が用意されていることで、同じ大学に通う学生でも、意欲をもって知識を学び、幅広い体験を重ねた学生と、アルバイトとサークル活動に明け暮れていた学生では、格差が生じることになりそうだ。

 日本の大学生にはかつてないほど、熱心に勉強に取り組む姿勢が求められているのだ。

 第1回で、谷出氏が「これからは大学格差とともに学生間格差が生じる」と分析していたのはこのことだ。学生自身が自分の将来像を持ち、何を選び行動するか決めるしかない。

 こうした状況を背景に大学1、2年生の間でもキャリアに関する意識が高まっている。

新卒採用に力を入れる効果に疑問

 濱中教授は企業の新卒採用偏重の動きに、別の視点からも疑問を投げかける。

 「人生100年時代の到来で生涯就業年数が延びていくことが予想されています」

 「そうなれば誰もが転職をすることが前提の社会になるわけですから、企業にとって新卒採用に力を入れることがどれほどの効果を生むのか疑問です」

 「というのも大手企業で手厚い教育を受けているのは、ごく一部の幹部候補生のみで、残りの多くは放っておかれているのが現状です」

 「実は既存社員をいかに再生し、戦力化するかということも企業の重要課題です」

 「今、職場にいる社員の方々にこれからの時代に求められる知識を授け、再び活躍する人材になってもらうリカレント教育の場としての大学の機能にも着目していただきたいです」

 確かに日本の企業はこれまで人材を大量に採用しておいて、そこからはふるいにかけ、できない人間は排除するという、“人材の掃き捨て場”とも言うべき状況がある。

 教育というなら新卒だけでなく、既存の埋もれた社員に目を向けることも企業にとっては課題なのだ。そうでなければ、優秀な新卒を採用しても、社内に軋轢を生むだけの存在になりかねない。